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第3話
聖女マリア=クレムルが、奪生者に身体を乗っ取られている事に最も早く気付いたのは、リュカだった。
月女神の加護の一つである聖なる力が、当代の皇族の中でも最も強い為か、初めての対面で既に違和感を覚えていたのだ。何かと二人きりになる機会を狙っていたマリアの誘いに敢えて乗ったある日、気付かれぬよう聖なる力を纏わせてマリアの手を握った。
すると、奪生者に押し込められていた聖女の魂が、聖なる力に共鳴し、ほんの僅かな時間だけ縛めを逃れて身体の主導権を取り戻した。本物のマリアの魂から助けを求められ、後日リュカを通じてごく限られたものだけでこの事実が共有された。異世界についての知識が皇国にあるとはいえ、奪生者が現れる事は歴史書や研究文を遡るレベルで稀な事。その上乗っ取られたのは皇国における信仰の源である、月の女神が遣わすとされる聖女だ。悪用の種になる事を避けるため、秘密裏に動き易く聖なる力の強さからも適任として、リュカとラウルに一任された。
器と異なる魂を引き剥がし、在るべき場所へ送る高位の聖魔術は、限られた者しか使えない。
術式を組み上げ、リュカが贈った宝石に発動させる為の力を込めさせて、然しラウルはそこから先にはリュカに手出しをさせなかった。守られ過ぎるのは嫌だと言っても、決して首を縦に振らない。
リュカとて皇族だ。聖女を救うのは人道的な美しい理由だけでなく、思惑もあって二人はこの役目を買って出ている。国内外に限らず、聖女はどの派閥においても利用価値があるのだから。
『お前は守られて、オレに男の甲斐性全うさせてくれよ』
『僕も男なのだけど?』
『わぁーってるって。でも、オレのお姫サマだろ?』
『もうっ、今真剣に話してるの!』
『真剣に話してるっての。……お前に相応しくなりたいんだ、リュカ』
『ラウル……』
『オレを信じて、待っとけ。必ず、お前を幸せにするから』
僕も君を幸せにしたい、と言うと、ラウルはいつも抱き締めて口付けてくれる。
相応しくならなければいけないのは、自分の方なのに。
ラウルは類を見ない大器の持ち主だ。何の後ろ盾も無くのし上がった実力は今や、多くの派閥や権力者から欲しがられている。長兄のように皇位に就く者でもなく、自由を与えてやれる立場でもなく、聖なる力しか取り柄の無い第三皇子なんて中途半端な人間が抱えて良い人間ではないと解っている。彼が選べば、世界さえも統べる事が出来るかもしれない。
解っていても、彼から離れる事なんて出来ない。死んでも、離れたくない。彼の幸せを願いながら、けれどその隣に自分がいなければ耐えられないなどと、何て浅ましく強慾なのだろう。
けれどラウルはいつも、そんなリュカをひどく満足そうな笑みで見つめる。
公爵親子を断罪した先程も、マリアの皮を被った奪生者から欲に満ちた眼差しを向けられていた事に心が澱み、執務室に入った途端、リュカから性急に口付けると、何も考えられないほど甘く抱いてくれた。微睡む身体を抱えられて湯に浸かり、ベッドに入れられて、離れようとする手を握った。
『んん……どこ、行くの……?』
『すぐ戻るから、寝てろ。大丈夫だ、起きたら全部──終わらせてるから』
『ラウル……?』
『おやすみ、リュカ』
頭を撫でる優しい手と声音、眠りへ誘うような柔らかい口付け。
解っている。彼は恋人で、そして側近で幼馴染で親友でもあるから。
そして彼も識っている。ラウルが何をするのか察して、リュカは望み通りに従う事を。
側近の望み通り、皇子は眠りの海へその月を沈めた。
*
真白のリネンに包まれ、男にとってこの世で最も美しいものが幸せそうに眠っていた。兄二人や己と異なり、体を動かす事が苦手な彼は体力面が弱い。配下がマリアを捕らえたのを把握した後も体位を変えて貪ってしまい、疲れてうとうと微睡む彼に湯だけ使い寝かせてやったから、その身は一糸纏わぬままだ。
滑らかな白皙に影を落とす長い睫毛の向こうに、黄金よりも優しい月の如き淡い金色が秘められている事を知っている。首筋から胸元にかけて、幾つもの鬱血痕が散っていた。男の強い独占欲の唯一たる対象故に、熱された鎖の如き情を一心に受けながら、然し彼にとってそれは甘やかな幸福でしかない。だから寧ろ、もっともっと、と男のものである証を彼の方から甘えるように欲してくるのは常の事だ。
常識的には最下層出身の男にとって手に入る筈のない、この国で最も貴い血に連なる彼は、然し幼い頃からまるで当然のように男の隣に在って、自分は男のものだと幸せそうに微笑んできた。だから男も、まるで当たり前みたいに、この地上の月が己のものだと思っている。外野がどんなに身の程知らず、簒奪を目論む者と罵ろうが、男にとって意味を成すのは、男を欲し男のものになりたいと微笑む彼の言葉だけだった。だから、公にも二人が共に在り続ける為に土台を構築し続け、遂に完成させた。彼の隣に並ぶに相応しい地位、公人たる彼が政治の駒として奪われぬ為の派閥の独立。同性婚の許されぬこの国で、譬え形式は無くとも公に認めさせる全てを。
「……」
寝台に腰掛け、顔にかかる黒掛かった深い蒼髪をそっと除け頬を撫でる手付きも、見つめる眼差しも、表情に出ない分だけ真綿の柔さと甘さは雄弁だ。睫毛が震え、ゆっくりと現れた月は男を映すと、甘く眦を緩めた。
「──おはよう」
散々喘がせた為に掠れても尚柔らかな声が含む、惜しみない愛情。思わず顔を寄せてちゅっちゅっと砂糖菓子のように甘いキスを降らせると、まるで子猫が大好きな主人に撫でられるのにも似た様で、ごく幸せそうに擽ったく目を細めて、顔を上向け享受する。普段、分け隔てなく心優しき皇子の鑑が、安心し切って彼だけには無防備に心を曝け出し甘えてくるのだ。愛しい恋人が可愛くて堪らず、リネンを捲って再びぐちゃぐちゃにしてやりたい衝動をぐっと堪え、男は彼の頬を優しく撫でた。
「本物の聖女を、お前の名の元に保護した。教会はオレ達に付く。──これでもう、誰もオレ達を引き裂けない」
間近で見つめ合った大きな双眸が見開かれて、軈てゆらりと水面を孕み揺れた。溢れんばかりの喜びと万感を宿して。
「僕の、王様……伴侶に、なれるの? ずっと一緒に、いられるの?」
それは二人だけの愛の言葉。
幼い頃、美少女と見紛う容姿の彼を慈しみを込めて「お姫サマ」と男が揶揄した折、「じゃあ、ラウルは王様だね」と彼に笑って返されたのがキッカケだった。姫の相手なら王子や騎士が相場だろう、と無自覚に不満を表したが、ケロッとした笑顔で「だってラウルは王子や騎士より、ずぅっと偉そうだもの」と返され、己の不遜と尊大さへの自覚から確かに、と笑ったものだ。
軽やかな冗句は温もりを変えぬまま、二人の心と想いが熟れるに従い、その意味を深めて行った。
父たる皇帝、自国への忠誠と別次元の、唯一愛の忠誠を誓う為に。隷属ではなく主従でもない。最も近いのは妻が夫を旦那様、と呼ぶものだが少し違う。己の全てを捧げ愛の証に拝跪する。いつしか皇子たる彼は、男を己の心に君臨する“王”と恋うた。
常に微笑みを絶やさぬ鷹揚な皇子が本当は、優しい余りに傷付き易く泣き虫である事を、唯一識っている親友を。
肉体の本来の持ち主である“本物の聖女”の魂は、あるべき所に戻り第三皇子と側近に忠誠を誓った。神が力を与えた聖女との繋がりを保つ為に、国教会は聖女を救った第三皇子の絶対的な味方にならなければなくなった。そして、多大な聖なる力を持つ皇子自身に加え、聖女の皇子に対する忠誠を以って、二人が他宗教へ改宗しない事を餌に国教会の権力を行使させる。
法的には認められずとも、いずれ男は第三皇子の事実上の伴侶と成されるだろう、──神の名の下に、祝福された未婚の伉儷として。
性など関係無かった。同性だろうが異性だろうが、譬えどちらであっても二人にとって愛の対象は唯一互いのみ。
男も堪らなくなって、美しい月の雫に唇を寄せ、優しく喰らった。自然と伸ばされる手を取り、強く繋ぎ合う。幼い頃から、そうしてきたように。
「──あぁ。お前は、オレと共にいろ」
永遠に。
二人分の命の重さを孕んだ言葉を口付けに代えると、応えるように絡めた指にキュッと力が入る。親指で滑らかな甲を撫でると、愛情深い仕草を受けて月の瞳が幸せそうにとろけた。
幼い頃から変わらない温もり。皇子と初めて出会ったその日を、男は鮮明に覚えている。
両親を亡くし、人身売買組織に拐われて男は呆気無く最下層へ堕ちた。人とも思わぬ扱いを受け絶望を飼い慣らした頃、皇国騎士団が組織を摘発し、孤児院に身を移されたが、奴隷扱いよりは遥かにマシでも辛酸を嘗める日々だった。第三皇子へ忠義を尽くす子飼いを選ぶ為に他の孤児と共に引き合わされたあの日。誰も信じず、冷めた目で警戒心を剥き出しにしていた子どもは、月の色をした大きな双眸が己を認め、花開くように無垢な笑みを浮かべた瞬間、暗く澱んだ思考が真っ白になったのを感じた。それから皇子は半ば呆然と目を見張る男の手を取って、皇族にも関わらず自ら名を名乗ってから男の名を尋ね、「一緒に遊ぼう」と笑ったのだ。
聡い皇子は当然に孤児達と引き合わされた目的も、己の立場故に求められる振る舞いも理解していた。にも関わらず子ども故の無邪気を盾にして、諦観に満ちるほど傷付き絶望していた男へ対等に接し、手足となる駒ではなく一人の人間として、男を必要とする者がいる事を言葉無く示したのだ。
その日から彼は、男にとって唯一の、
「愛してる、リュカ……オレの神様」
柔らかで真っさらに煌めく笑顔が向けられたあの時、この世で何よりも尊い存在に出会ったと思った。何もかもを諦め拒絶し、草臥れた最下層の子どもに屈託無く笑みと温もりを与える──神様とは彼の事なのだと。そして神様の隣を望み、人間である己がその場所を得るには人間の中で最も高い所に上り詰めなければならないと結論を出した。神様にとっての王、彼に相応しい人間に成るのだと。
聖女の皮を被った奪生者は理解出来なかったようだが、どんなに筋書きとやらに添われようが、そしてそれが譬え本物の聖女による慈愛だったとしても、はなからお呼びでないのだ。権力者や聖女が一体何だと言う。何人も、己の唯一の神様の前では等しく、有象無象に過ぎないのに。
「僕も愛してる、ラウル……」
零れ落ちる涙が煌めいて、浮かべられた微笑みが余りに美しいから、男の顔にも淡やかで柔らかい微笑が浮かんだ。ほんの時折、彼にだけ見せるその無防備で少し幼くさえある笑みに、心臓が真綿で包まれるような優しい温もりに甘く満たされる。
彼の頬を包む傷痕多き手に、整えられた手が重なる。すり寄せて来る温度が愛おしい。彼はそのまま男の掌に唇を寄せ、切望の囁きを紡ぎ出した。
「ねぇ……愛し合いたい。僕の全部、ラウルのものだって実感したい」
──言葉だけじゃ、伝え足りないの。
喜びに高ぶったのだろう。双眸を熱く潤ませたまま、情欲をぐらりと煽り立てる可愛いおねだりを上目遣いにされて、元よりそのつもりだったので遠慮無くシーツを剥ぎ取った。
唇を重ね、上唇を柔く吸うように何度か食んだ後、下唇ごと舐り隙間をなぞれば、ごく自然と舌を迎え入れる口内を甘く濃密に犯し始める。上顎も歯列も頬の内側も、隅々までねっとりと舌を這わせていると、こっちもしてとばかりに舌が絡み付いて来るから、舌全体で根元から舌先まで捕らえ吸い上げた。溢れる唾液を纏うそれをぬるぬると擦り合い、舌裏の根元を擽りつつ軽く歯を立て扱くと、組み敷いた細腰が揺らめいた。同時に掌で滑らかな肌を丹念に撫で上げると、彼の唇から滴り落ちる甘い声が悩ましさを増す。
「んんっ、ンぁ、……っふ、んぅ」
数刻前に愛されたばかりの体は容易く火を灯されて、首から背筋にゾクゾクと震えが走り、肌を撫でられるだけで愉悦を広げていく。男の金糸に指を絡めるようにして、柔らかくも官能的な手付きで髪を乱すと、細身ながら節の立った掌が応えて彼の胸を揉み摩った。女のような柔らかさなどある筈無い、薄い筋肉のみの平な其処は僅かな弾力があるばかりなのに、男にとっては欲情の対象だ。女も他の男にも興味など無い、彼の身体だからこそ劣情を駆り立てられる。
重ね続ける唇の中で、胸を揉むごとに快感を拾い上げた彼は舌を震わせる。やがて刺激された胸の頂が、ふくりと尖り掌を押し上げてくるのを見計らい、誰とも分からぬ唾液を互いに嚥下しながら唇を離し、人差し指の先で尖を重点的に愛撫し始める。果実のような尖の縁をなぞっては、輪郭を爪先で触れるか触れないかで、かり、すりと引っ掻けば、彼はピクンピクンと震えた。けれど直ぐには愛撫を強めない。爪先で淡い刺激を与え続けつつ、じっくりと見下ろす。
「っん……ぁ、っ、そこ、もっと……」
「もっと、……指で弄られてェか? 舐めて欲しいか?」
可愛くて可愛くてとびきり甘やかしてやりたいと同時に、可愛いからこそ虐めて反応を見たいという強い嗜虐心もあるからどうしようもない。清廉潔白と名高い恋人が羞恥に目元を淡く赫らめ、もどかしい刺激に甘く悶える様が堪らない。唆られて笑みに歪む唇端を舐めながら、耳元へ唇を寄せれば促す様に耳朶を甘噛みして、中を舌先で優しく撫でた。ピチャ、と水音を直接脳へ染み込ませつつ、数刻前に胸の先を可愛がった愛撫を思い出させる。
首を竦めながら甘く喘ぐ彼は、けれどふるふると首を横に振った。
「何だよ、して欲しくねェのか?」
「ふ、ぅ、ちが……っ、選べ、ない……全部、すき」
「欲張りなお姫サマだなァ」
しょうがねーな、とばかりな口調は、然し愉悦に満ちて恋人の可愛いご希望を全て叶えるのを躊躇わない。美味そうな首筋に舌を這わせ、時折吸い付きながら辿り下りて、主張し始めた胸の尖をほんの淡く唇で食みつつ、もう一方に示指の腹を当てる。そのまま彼を見上げ視線を交じらせると、彼は恥じらいに混じり隠し切れない期待を双眸に滲ませて、薄く開いた唇から籠った吐息を漏らした。視線を合わせたまま、固くした舌先と指の腹でゆっくりと、紅く膨らんだ胸の先端が上へとくり転がされるのを見せ付ける。
「あぁ、──」
朱唇から漏れる小さな声は、切ないようにも強請るようにも聞こえた。控え目ながら琴線を揺さぶるその声が下腹部まで響き、男は貪るように愛撫を本格的なものにする。舌先と指で円を描いて捏ねくり回し、れろれろと上下左右に弾いたかと思えば、親指と中指で突起を更に尖らせんと扱き、つまんだまま人差し指で尖の頂を引っ掻いたり押し潰す。或いはもう一方では、周辺の肌ごと突起を口に含み先端に向かってジュウっと音を立てるほど吸い上げ強く弾いたり、口の中で舌や歯で転がしたり捏ねたり。堪らず悶えつつも、生来控え目な彼に未だ理性が残っていたようで、思わず声を堪えようと唇を噛むが、すかさず空いた手の親指をその口内へ捻じ込む。
「んむっ、ひぁ、は、ぁあっ……っやらぁ、ん」
「唇噛むなっていつも言ってるだろーが。目も逸らすな、……オレを見ろ」
男は大抵において彼に声を堪えさせず、また唇を噛んだり傷付く恐れがある事も許さなかった。絶対に傷付けたくない彼は男の望むままあられもなく喘ぐか、男の指をしゃぶるしか出来なくなってしまう。しかも、やだやだと恥じらう程に男は嬉々として意地悪を強める。強請ったのは自身でも、目の前で見せ付けられる余りに淫らな光景に羞恥心が煽られ、思わず目を背けたくなってしまうのも、熱を孕んだ声音に命じられれば逆らえない。快楽に悶える以外で、その乱れ切った様を男が眺めるのを邪魔する事を、彼にさえも男は許さない。
獲物に喰らい付く肉食獣のような眼に射竦められて、雄への期待感にゾクリと腰まで震えると同時に、舌と指使いがむしゃぶりつく程激しくなった。舐られて濡れ光り、ぷっくりと熟れた尖が、ごく至近距離で目を合わせられたまま指や舌と唇によって良い様に弄ばれる。
「おいし……お前の乳首」
「やぁっ、んンッ、ぁ、ア……っ!」
時に貫きながら深い口付けと強固な抱擁で快感を内に封じ、逃げ道の無い深淵まで感じさせたりもするが、今日は存分に善がらせてやりたかった。口では「やだ」「だめ」と言いながら、身体の反応は色好く暴君の所業を許してしまう素直な彼を哀れむ一方、愛おし過ぎて改める気は更々無い。
笑みを含む声が尖からも伝わり、ビリビリと走り抜ける快感に声が跳ね上がった。きゅむっと強まる指使いと甘噛み。恥じらうのと裏腹に男の動きを一切妨げずシーツを握り締めていた手が、縋るように男の頭を掻き抱くと同時にビクビクと震え強張る。軽い絶頂に達したのだろう、月の色が先程までの歓喜と異なる熱で潤んでいた。親指で舌を撫でると、無意識に甘えて吸ってくるから、クツリと笑みを喉奥へ籠らせた。
彼の口から指を抜いた片腕を支えに軽く身を起こし、胸を愛撫していた手を撫で下ろして行く。臍の下へ、更に下の下腹部をゆっくりと意味深に撫でると、肌の下で二人が繋がる感覚を想起した恋人の頬が染まった。何を言うまでもなく、白い脚がごくごく控え目に膝を立てつつ開かれると、その間に陣取って「良い子だ」と偉そうに唇が弧を描く。サイドボードの小瓶から香油を掌に出し、繰り返し握り込んで体温で温めつつ、男は体を彼の下腹部へと下げて行くのだった。
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