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SS1-1
まだ付き合う前の社内エレベーター内にて。
城崎視点。
下心だらけの城崎脳内をお楽しみください。
***
11月初旬、季節はまもなく冬に差し掛かろうとしている。
俺はこの春社会人になり、そして好きな人ができた。
同じ営業部の先輩、望月綾人さんだ。
所謂 一目惚れというやつで、それから先輩のことを知るたびに、底なし沼のようにどんどん夢中になってしまった。
仕事に関して厳しいところもあるが、それ以上にとても優しい。同僚が凹 んでいたら話を聞いてあげているところを何度も見ているし、俺も一度相談に乗ってもらったことがある。
笑顔が素敵で、飲むと可愛らしくて、なんかもう全部が好き。
今では先輩を妄想してヌいてしまうほどに、俺は重症だ。
「おはよう、城崎。」
「おはようございます!」
エレベーターを待っていると、たまたま先輩が出勤してきた。
いや、まぁ大体同じになるように日々計算して、出勤時間を寄せているんだけど。
エレベーターが開いて、先輩を先に通す。
俺も後に続いて乗り込み、エレベーターが上の階へと上がっていく。
そして何故か、2階で異常なまでの人々が乗り込んできた。
「うわっ…!」
「おっと……。大丈夫か?城崎。」
「だ、だだだ…、大丈夫……です………」
後ろから押され、先輩を角に押し付ける形で体が密着した。
やばい。やばいやばいやばい。
大丈夫とは言ったものの、全く大丈夫じゃない。
昨日の夜、如何 わしい妄想に先輩を使った。
なんならヌいた。
「うっ……」
「城崎、本当に大丈夫か?」
「すみません……」
先輩が心配そうな顔で俺を見つめる。
やめて、先輩。
先輩の方が背が低いから、どうしても上目遣いなんです、それは。
痛い。股間がスッゲェ痛い。
ギュンッと天を仰いでいるアレが先輩に当たらないよう、細心の注意を払う。
こんなの先輩にバレるわけにはいかない。
ガタンッ………
「何?」
「ふっ………!」
変な声出た。
エレベーターが揺れた拍子に、先輩が思わず俺のコート掴んだから変な声出た。
いや、当たるって。先輩、近いです…!!
てか、え?エレベーターが揺れた……?
『ただいま中央エレベーターにトラブルが発生し、停止しました。早急に原因解明に当たっていますので、原因が判明するまで少々お待ち下さい。』
社内のアナウンスが、これほど絶望を招いたことはない。
先輩と密着できる美味しいシチュエーション。
神様からのご褒美と思っていたが、どうやら試練の間違いだったようだ。
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