9 / 128

SS1-1

まだ付き合う前の社内エレベーター内にて。 城崎視点。 下心だらけの城崎脳内をお楽しみください。 *** 11月初旬、季節はまもなく冬に差し掛かろうとしている。 俺はこの春社会人になり、そして好きな人ができた。 同じ営業部の先輩、望月綾人さんだ。 所謂(いわゆる)一目惚れというやつで、それから先輩のことを知るたびに、底なし沼のようにどんどん夢中になってしまった。 仕事に関して厳しいところもあるが、それ以上にとても優しい。同僚が(へこ)んでいたら話を聞いてあげているところを何度も見ているし、俺も一度相談に乗ってもらったことがある。 笑顔が素敵で、飲むと可愛らしくて、なんかもう全部が好き。 今では先輩を妄想してヌいてしまうほどに、俺は重症だ。 「おはよう、城崎。」 「おはようございます!」 エレベーターを待っていると、たまたま先輩が出勤してきた。 いや、まぁ大体同じになるように日々計算して、出勤時間を寄せているんだけど。 エレベーターが開いて、先輩を先に通す。 俺も後に続いて乗り込み、エレベーターが上の階へと上がっていく。 そして何故か、2階で異常なまでの人々が乗り込んできた。 「うわっ…!」 「おっと……。大丈夫か?城崎。」 「だ、だだだ…、大丈夫……です………」 後ろから押され、先輩を角に押し付ける形で体が密着した。 やばい。やばいやばいやばい。 大丈夫とは言ったものの、全く大丈夫じゃない。 昨日の夜、如何(いかが)わしい妄想に先輩を使った。 なんならヌいた。 「うっ……」 「城崎、本当に大丈夫か?」 「すみません……」 先輩が心配そうな顔で俺を見つめる。 やめて、先輩。 先輩の方が背が低いから、どうしても上目遣いなんです、それは。 痛い。股間がスッゲェ痛い。 ギュンッと天を仰いでいるアレが先輩に当たらないよう、細心の注意を払う。 こんなの先輩にバレるわけにはいかない。 ガタンッ……… 「何?」 「ふっ………!」 変な声出た。 エレベーターが揺れた拍子に、先輩が思わず俺のコート掴んだから変な声出た。 いや、当たるって。先輩、近いです…!! てか、え?エレベーターが揺れた……? 『ただいま中央エレベーターにトラブルが発生し、停止しました。早急に原因解明に当たっていますので、原因が判明するまで少々お待ち下さい。』 社内のアナウンスが、これほど絶望を招いたことはない。 先輩と密着できる美味しいシチュエーション。 神様からのご褒美と思っていたが、どうやら試練の間違いだったようだ。

ともだちにシェアしよう!