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SS1-2
俺はどっと汗をかいた。
この状況で、いつまで耐えろと…?
少々って何分何秒?!
駄目だ、こんなの無理……!
「城崎……、お前顔色悪いぞ…?」
「そっ、そうですか??」
「うん。すげぇ汗かいてるし…。」
「…ッ!!」
先輩は心配して、ポケットから出したハンカチで俺の額の汗を拭う。
ヤバい。本当に変な気分になりそう。
というか、もう本当に限界…。痛い……。
「先輩……、肩借りていいですか……?」
「ん、いいよ。」
先輩の肩に頭を置き、息を整える。
あー、駄目だ。
深呼吸するたびに先輩の匂いが俺をさらに興奮させる。
決めた。
俺は腹を括 り、自分のスラックスのチャックに手を伸ばす。
満員だし、俺が密着してるから先輩も下は見れないはず。
ギンッギンに昂 った自身を片手で握った。
「……ッ、ぁ………、ふっ……」
「城崎…?」
「先輩…ッ……、………っ」
「大丈夫?深呼吸しな?」
先輩は俺の頭を撫でる。
妄想なんかと全然違う。
先輩の匂い、温もり、声。
五感を最大限に研ぎ澄ませ、先輩を感じる。
いけないことをしているのは分かっているけど、こんなの…。
「………〜〜ッッッ!!」
多少時間はかかったが、俺は楽になった。
もう先輩に密着しても当たるものはない。
肩を借りて力を抜くと、先輩が両手で支えてくれた。
「開いたら医務室行こう。」
「大丈夫っす……。」
「本当に心配だし。あ、これ使いな?」
先輩はハンカチを俺に渡す。
汗を拭けってことなんだろうけど、今の俺には汗以外に隠蔽 しなきゃいけないものが手の中にある。
「洗って返します…。」
「別に返さなくていいよ。まぁでも、なんかさっきより顔色良くなってよかったわ。」
最高の興奮と、最大の背徳感。
先輩の善意に多大なる感謝と謝罪を心の中で呟いた。
「あ、動いた。」
トラブルが解決したのか、エレベーターがまた動き出した。
先輩はホッとしたような顔をしている。
「城崎っ?」
「ごめんなさい、着くまで…。」
「……………おう///」
俺は目的階へ着くまでの束の間、神様のくれたご褒美に感謝をしながら、先輩を抱きしめて余韻に浸ったのだった。
fin.
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