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SS3-1
同棲後、珍しく別で帰宅。
城崎視点。
本編p311後のお話。
ラッキースケベに出会して内心大喜びの城崎をお楽しみください。
***
「もうこんな時間かよ。最悪…。」
時計の短針が10を指した。
駅の近くにはカップルや、酔い潰れたサラリーマン、居酒屋のキャッチ、塾帰りの子どもを待つ親など様々。
そんな中、俺は真っ直ぐに家までの道を早足で帰る。
先輩と同棲してから早数週間。
毎日のように一緒に帰っていたのに、今日は俺だけ帰る間際に残業が言い渡された。
残業とは言っても、来週に部長と行く大阪出張の打ち合わせだ。
それだけであればすぐ終わったはずなのだが、なんせ金曜日の夜。
部長に誘われ、断ることもできずに居酒屋へ付き合った。
俺は家で先輩と食卓を囲みたかったのに…。
会社を出る前に先輩に一通メールを送った。
付き合う前はメッセージアプリでしか基本的にやりとりしていなかったが、付き合ってから私用のメールアドレスも交換して、それから時々メールを送り合ったりしている。
部長と外で食べる旨を簡単に書いて送信した。
メールには、『そっか。じゃあ先に寝てる。』と返信があった。
一見淡白に見える内容だが、実はこれには続きがある。
スッと下に画面をスライドすると、多量の改行を経て『早く帰ってこいよ。』と可愛すぎる一文。
先輩は時々こういうことをする。
これに気づいたのはいつだったか。
最初は気づかなかったけど、ある日偶然続きがあることに気づいて下にスライドしたら、本音と思われる可愛い一言を見つけてしまったのだ。
遡 ると過去のメールにもいくつか。
先輩は俺がそれに気づいたと知ったらやめそうだから、絶対に気づいてることは悟られないように振る舞っている。
部長に誘われたから断れないのは先輩も分かっているだろうし、だからこそバレないように本音を書いたんだろう。
「可愛すぎ……。」
マンションが見えて、部屋の明かりがついていることを確認する。
あぁ、先輩。
もしかして俺のこと待って起きてくれてるんですか?
俺は浮かれてエレベーターを待つこともできず、階段を駆け上がった。
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