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「綾センセーのお願いだったら、聞いてもいい……。」 城崎はポツリとそう呟いた。 今にも泣き出しそうな城崎の頭に、ぽんっと手を置く。 あぁ、城崎に触れてるのに、感触がなくなってきた…。 なんとなく分かった。 もう夢から覚めそうな、そんな気がする。 「じゃあ、城崎に最後のお願い。」 「え……?」 「ちゃんと、卒業して。」 俺がお願いすると、城崎は眉を八の字にした。 「なんで……、最後とか言うの…?」 「………」 「綾センセー、もう会えないの?」 「うーん……。どうだろ?分かんないや。」 この夢の世界の城崎は、今の城崎と繋がってるのかな? いや、きっとパラレルワールドだ。 だってこの俺が、教師やってるんだもん。 苦笑しながら城崎の頭を撫でると、城崎はポロッと涙をこぼす。 「やだ……。綾センセーと離れたくない……。」 「俺も。離れたくないよ……。」 「じゃあそばにいてよ……?」 「俺、帰らなきゃいけないとこ、あるんだ。」 「どこ…?誰の所?センセーにとって、俺は遊びだったの?」 「違うよ。本気だったよ。本気じゃなきゃ、おまえみたいなめんどくせぇ奴に手出さないよ(笑)」 思わず笑うと、城崎は「馬鹿。」と言いながら、ぽこぽこ俺を叩く。 夢から覚めそうだから感覚が鈍くなってるだけなのか、全然痛くない。 どっちにしろ、本気で殴ってないのが目に見えて分かる。 「俺さぁ、パラレルワールド?から来たんだけど。」 「は?何言ってんの…?」 「元いたとこでもさ、城崎夏月と付き合ってんだよ。」 「え……?」 城崎はポカンとした顔をしている。 そりゃそうだ。 いきなりパラレルワールドとか言ったり、そっちでも城崎夏月と付き合ってるって言ったり。 意味わかんねーよな。 「あいつが待ってるから、そろそろ戻るわ。」 いつもの城崎を想像して、思わず笑いそうになる。 あいつなら、自分相手にも嫉妬するんだろうな。 夢から覚めたくないとか思ったけど、すげぇ会いたくなってきた。 「やだ。センセー、やだ。行かないで…。」 「綾センセーって言われるの、結構好きだったよ、俺。」 「何回でも呼ぶから!いっぱい呼ぶから、行くなよ…。」 「夢から覚めたら、また会おうな。」 「やだっ!綾センセー、行かないで…!」 「バイバイ、城崎。」 俺の意識はそこでぱったりと途絶えた。

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