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SS4-1

まだ付き合う前、城崎社会人一年目。 大学時代の友人に誘われた合コンにて。 城崎視点。 *** 「城崎、この通り!」 「嫌だ。」 「頼むよ〜!お前が来ないと俺の狙ってる子が来てくれないんだって…!」 社会人になって数ヶ月。 大学時代、一緒に講義を受けていた何人かで集まった飲み会で、俺は友人に頭を下げられている。 「はははっ!そもそも城崎が来ねーと来ない女なんて、城崎しか眼中にねーじゃん!おまえ何もメリットないって!」 「いや、もう見るだけでもいいんだよ!てか、城崎のおまけくらいの感覚で連絡先交換できたら超ラッキーだし!」 「そんなんでいいのかよ〜?」 他の奴らの言う通りだ。 眼中にない奴なんて、何も起こり得ないだろ。 実際俺はゲイだから女なんて眼中にないし、どれだけ迫られても何も起こらない。というか、起こさせない。 「マジで行かないからな。俺好きな人いるし。」 「えぇ?!あの大学時代一人も恋人作らなかった城崎が?!」 社会人になって初めて恋をした。 6つ上の先輩の望月綾人さん。 先輩は俺の好みど真ん中の顔してて、おまけに優しくて男前。 笑うとすげぇ可愛くて、甘いものが好きなのもそれがまた可愛い。 お酒弱いのに飲むのが好きみたいで、飲み会の時はいつも隙だらけ。 気づけばずっと先輩のこと目で追ってしまってる。 でも先輩のこと知れば知るほど、普通に女の人が好きで男なんか恋愛対象として全く見てないんだなと悲しくなる。 「会社の人?!どんな美人?!!」 「うるせー。言わねぇよ。」 大学の友人には俺がゲイであることは伝えていない。 知ってるのは家族と、ゲイ仲間だけ。 大学時代、恋人はいなかったけどセフレなら腐るほどいたけどな…と言うつもりはない。 「とにかく行かねーから。」 「マジで頼むって!あ、そうだ。これ!これあげるから!!」 「バーカ。おまえ、それだけは城崎いらねーだろ。」 どうせ俺には必要ないものだ。 だって今の俺が欲しいのは先輩ただ一人。 それに大学の友人ですらわかる俺の必要ないものなんて、絶対要らないだろ。 と思ったけど、一応何かなと思って横目で友人がチラつかせる紙を見た。 「それって…!?」 「半年先まで予約いっぱいのスイーツビュッフェの招待券。言われてみれば、城崎って甘いもの苦手だったっけ?はぁ〜…、今回は諦めるか……。」 「…………行く。」 「……………へ?」 「行く。合コン行くから、そのチケット頂戴。」 「………マジ?」 友人が持っていたそれは、前に先輩が抽選に外れたと嘆いていた有名ホテルのスイーツビュッフェの招待券。 先輩にあげたい。 先輩に喜んで欲しい。 その一心で、俺は合コンの誘いを承諾した。

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