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SS5-2

先輩は「すみません。」と秘書課の女の子達を押し退け、我が物顔で俺の隣に座る。 「バカ。嘘つき。女ったらし。どうせ愛想振りまいて、その気にさせるような態度取ったんだろ。最低。バカバカバーカ。」 酔った先輩は俺を好き放題罵った。 何この状況? すげー可愛いんだけど。 嫉妬……だよな? かと思えば、さっき秘書課の子が俺のためによそった鍋を、先輩は急にガツガツ食べ始めた。 いやいやいや、先輩泣いてる?! 「城崎さぁん♡」 「いや、ごめんなさい。今ちょっとそれどころじゃないというか…、他の方とお話してきてください。」 この状況を見て尚、話しかけてくるこの人たちの神経が分からない。 俺の大好きな先輩が泣いて飯食ってんのに、恋人の俺が放っておけるわけないじゃん。 泣かせたいわけじゃない。 何が先輩の気に触れたんだろうか。 好きでもない女と社交辞令で話してて、それで怒っちゃったのか? 「先輩…、ごめんね?本当ただ、ちょっと話してただけで…。」 「知らない!もう勝手にすればいいじゃん。」 「ねぇ、泣かないでよ…。」 「泣いてねーってば!!」 先輩が目の前にあるジョッキを掴む。 「ちょ、ダメ…!!」 慌てて止めるが間に合わず、先輩は注がれに注がれた俺のビールを一気に煽った。 ヒック…としゃっくりをしてボーッとしたのち、スイッチが切れたように俺の肩に倒れかかってきた。 肩に頭を置かれているので顔までちゃんと見えないが、喉を鳴らしながら甘える猫のように、先輩はすりすり俺の体に頬を擦り付け甘えてきた。 可愛すぎて今すぐ襲い掛かりたいくらいだ。 「城崎が望月に懐いてんのかと思ってたけど、逆だった感じ?」 目の前に座る上司に不思議そうに聞かれる。 「いや、合ってますよ。俺が懐いてるんですけど、先輩お酒入ると甘え上戸なだけで。」 先輩は俺のものだと言いふらしたい気持ちを抑え、それっぽく答える。 先輩が俺を守ろうとしてくれてる気持ちを蔑ろにはできないから。 「へぇ〜。望月がお酒弱いのは知ってたけど、甘えるの初めて見たかも。」 「あ〜はは…、俺が尽くしすぎて甘えやすいのかも…?」 「あ、そっか。そういえば望月、同棲してんだっけ?城崎、彼女と間違えられてんじゃねぇの?」 その彼女、もとい恋人はこの俺だ。 間違えてなどいない。 この人は酔った頭でも、ちゃんと俺を認識してこっちに来てくれたんだから。 いい気になってると、先輩の手に力がこもる。 ぷくっと頬を膨らまして、なんか怒ってるみたいだ。 俺が上司と話しているだけで嫉妬している先輩が愛おしくて堪らなくなる。 ニヤけそうになる顔を周りにバレないよう心を落ち着けていると、先輩の右隣に現れた人影に浮上した気持ちが一気に冷めた。

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