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SS5-3

「望月さぁん!お話の途中だったのに…」 「もろ…ずみさん…?」 「きゃあ♡望月さんって酔うと甘えたさんになっちゃうんですね♡可愛いですっ♡♡」 先輩の腕に胸を押し当てながら、猫撫で声で話す諸角。 何してくれてんだ、馬鹿野郎。 女の武器使いやがって…。 見てみろ、この先輩の困った顔。 貴女のご自慢の胸ですら、先輩は振り向かないんですよ。 なんせこの俺が、俺でしか欲情しないように、時間かけてたっぷり愛してきたんですからね! と、内心勝ち誇ったように思ったが、この忘年会が一年前だったら先輩はコロッといかれてたかもしれない。 先輩がもしこの女と付き合ってたら…、なんて考えたくもない。 俺の先輩。 俺だけの先輩。 「ちょっと一回この人吐かせてきます。」 「え…。」 先輩の肩を抱いて立ち上がる。 諸角は唖然とした顔で俺たちを見上げている。 残念でしたね。 貴女の好きな先輩は、俺のことが大好きで大好きで仕方ないんです。 「すみません。気にせず楽しんでてください。」 せいぜいその辺の男におべっか立ててろ、バーカ。 あんたに先輩を譲る気は一ミリたりともないんですよ。 「ちょ、城崎ぃ…?」 酒飲みすぎて全く状況についてこれていない先輩。 そんなおバカな表情すら可愛くて仕方ない。 肩を抱いて半ば強制的に宴会場を後にする。 廊下ですれ違う別団体の客に見られながら、先輩をトイレに連行し、個室に連れ込んで鍵を閉めた。 ドアを勢いよく閉めたので、先輩が小さく震え、俺を見上げる。 上目遣い可愛いな……、じゃなくて! 「先輩、あれ何。」 「あれって何だよ…?」 「秘書課の人!!距離近くないですか?!」 捲し立てるようにそう言うと、先輩はシュン…と悲しそうに眉を下げる。 「おまえだって侍らせてたじゃんか…。」 「勝手に寄ってきただけです!大体先輩はいっつもそう!海の時だって胸押し当てられてたし!隙だらけなんですよ!!」 可愛いけどダメ。 これで許したら、また同じこと繰り返すもん、この人。 絆されそうになるのを我慢して、できるだけ威圧すると、先輩はキュッと俺のシャツを握りしめた。 「城崎が悪いもん……。」 「は?何でですか。」 「城崎が俺のこと待たずに女の子侍らせてたもん!だからイライラして酒煽ったらあんま気になんなくなっただけ!城崎が女の子といなかったら、酒だってセーブしたから防げたもん!!城崎のば…っ、ン……♡」 可愛さのバロメーターが振り切って壊れた。 先輩が可愛すぎて堪らなくて、先輩が喋ってる途中にも関わらず唇を塞いだ。

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