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「来ねぇって誓ったのに……。」 一週間後、俺は城崎内科クリニックの前に立っていた。 あれだけヤブ医者だのセクハラクリニックだの文句を言ったにも関わらず、だ。 何故かって、先生に言われた通り薬飲んでたら、本当に治ったんだもん。 治ったけど受診しろって言われたし、御礼も言わないとだし……。 それに最近、少し胸がモヤモヤするというか、重い感じがする。 「すぐ帰るし……。うん。」 扉を開けようとしてハッとする。 あれ?今日って休診日…だよな…? 今は日曜日の15時。 扉と診察券に貼られたシールには、日曜は午前午後ともにバツの文字が書かれている。 何だ、あの医者。 予約するとか言って、休診日じゃん。 内心少しホッとして回れ右をすると、突然扉が開いて腕を引かれた。 「望月さん、お待ちしてました。」 「っ?!!?」 「どうぞ、中へ。診察します。」 爽やかな笑顔でそう言われるが、俺は驚きすぎて今心臓が飛び出そうだった。 バックンバックン身体中に響き渡るくらい心臓が大きく脈打って、目を見開いてる俺をみて先生はくすくす笑った。 俺の返事を待たずして、先生は俺を診察室へ連れていき、座らせた。 「その後どうですか?」 「な、治りました…けど……」 「けど?」 「なんか胸が重だるいっていうか……、モヤモヤするっていうか……。」 「ふむ…。胸がモヤモヤした感じは四六時中ずっとですか?」 モヤモヤした感じ…。 これを感じるのは……。 「先生のことを思い出した時…とか。」 「へぇ?他には?」 「あとは……、んっと……」 「私のことを思い出したときだけ。ですか?」 「…………」 言われてみればそうかもしれない。 ん?何でだ?? 「心臓ですし、念のため詳しく検査しましょうか。」 「え、でも…。そんなに苦しいわけじゃなくて…。」 「早いに越したことはありませんよ。それに今日は私と望月さん二人きりです。時間はたっぷりありますから。」 「じゃあ…、よろしくお願いします。」 「はい。では、エコーの検査をするので、そこに横になって上の服を脱いでいただけますか?」 医者としての腕には問題ないみたいだし…。 俺は先生を信じて、Tシャツを脱いでベッドに横になった。

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