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こうして大阪、札幌、福岡、名古屋の公演を終え、東京4公演目、最終日。 「透さん遅い……。」 コンサート会場は大賑わい。 だって、オーラスだもん。 チケット取れなかったファンが同行者として行きたいと募っていたり、ダフ屋が若い子に声かけたり。 あいつら全員通報してやりたい…。 (※複数名義も規則違反です) というか、透さん連絡もつかないし…。 席空けるの嫌だなぁ。 もうその辺の人にあげちゃおうかな…。 「待たせたな、夏月。」 「あ、透さん!遅いですよ!もう〜!早く入りますよ!」 「19時開演だろ?まだ30分前じゃねえか。」 「席についてドキドキするのも醍醐味の一つなんです!!分かってないなぁ!!」 「だからおまえのそのキャラなんなの。」 推しのことになると、キャラブレくらいするよ!! というか、今日の公演、アリーナメインステージ前最前列なんだが?! 過去最高神席だけど、入場口から遠いから一時間前には入りたかったのに。 本当透さんって分かってない! 「ていうか、緑すぎねぇ?」 「メンカラです。透さんはこれ付けてください。」 「うわ、ダサ。やめろよ。」 「とにかく付けて!!」 「わかったよ……」 透さんのジャケットのポケットに、圭くんのメンカラであるピンクのハンカチを入れる。 よし、いざ出陣! 会場に入り、席に着く。 メンステ近すぎ…!! やばい。待って。この近さって毛穴まで見えるのでは?! (※見えません) え、やばい。既に泣きそう。 オーラスともあって、会場内の熱気がいつもの比ではない。 「なんで泣いてんの…。」 「だって……、ここに綾くんが立つんですよ…?」 「おまえの情緒どうなってんだよ。」 透さんはオーラスをこの席で見られることがどれだけ凄いことかわかってない。 ファンなら泣く。 ほら、見てみろよ。 周りみんな泣いてるじゃん…。 感動していたら1分前になり、カウントダウンが始まる。 会場みんなでカウントダウンコールをして、コンサートは開演した。 「綾くーーーーん!!!」 「うっせぇ…。」 透さんは終始冷めていたけど、その目は確実に圭くんを追っていた。多分。 俺は綾くんを見ていたから、透さんがどこ見てたかなんて分かんないけど。 メンステ前なので踊るばかりで、ファンサはあまりもらえなかった。 だけど綾くんが俺見て笑ってた気がする。 錯覚じゃない。うん。絶対俺のこと見てた。 アンコールまで思いっきり楽しんで、アルバムツアーは終わりを告げた。

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