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ネオン街の喫茶店。 こういうことが日常茶飯事なのか、それとも俺たち以外に客がいないからなのか、マスターは見て見ぬふりをしてくれた。 ソファに押し倒して、綾くんの唇を味わう。 甘い。 さっきケーキ食べてたからかな? 推しの唇が甘いなんて、妄想通りすぎてもはや感謝しかない。 舌を絡めようとすると、逃げるように引っ込める。 でも追いかけて捕まえて、しっかり絡めて吸ってあげると、気持ちいいのか力が抜けた。 マジで可愛すぎ…。 「んっ…、ん…は、城崎くっ…んんっ」 「綾くん…、綾くん、可愛い…っ」 声、可愛い。 いつもより少し高い綾くんの声に、興奮がおさまらない。 喘がせたらどんな声出すんだろう? 見たいな、聞きたいな。 いつもと違う、綾くんの全部。 「綾くん…」 「んっ…、何……?」 「ホテル行こ?」 「なっ、何言ってんの…?!」 「俺のこと何でも教えてあげるから、綾くんの全部、俺に見せて?」 「ひゃ…んんっ…」 痕がつかない程度に手首を掴み、男の力でねじ伏せる。 綾くんも男なんだけど…。 それに、ねじ伏せるとは言っても、本当に嫌なら俺の股間蹴って逃げればいい話で。 うるうる涙を溜めて俺を見るその瞳は、恐怖と不安と、そして少しの期待がこもっている。 「俺、綾くんのこと気持ちよくする自信あるよ?」 「んっ…」 「行こ?」 「…………」 綾くんは本当に微かにだが、首を縦に振った。 俺はその微かな動きを見逃さず、綾くんをお姫様抱っこした。 綾くんはされたことないのか、恥ずかしそうに顔を真っ赤にして俺の胸に顔を隠した。 いや…、犯罪級に可愛いな、おい? 世間では王子様と呼ばれているSparkleだけど、俺の前の綾くんだけは、誰が何と言おうと世界一可愛い俺だけのお姫様だ。 マスターに五千円札を渡し、お釣りも受け取らずに店を飛び出した。 ネオン街だから、ラブホなんて腐るほどある。 国民的アイドルをラブホなんかに連れ込んでいいのかと、心の中にいるヲタクの俺が自分自身に問いかける。 ヲタクとしての答えはNOだ。 何としてでも高級ホテルに入れと。 しかし、男としての俺は今すぐそこのラブホに入れと言っている。 俺の胸の中に顔を埋める綾くんを見ると、チラッと上目遣いに俺を見た。 まだ?と言わんばかりのその瞳。 俺はその目を見て、迷いなくラブホへ駆け込んだ。

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