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SS6-2

ゲームを始めて30分。 おかしい。何故だ…。 「ああああああ!!また負けた!!城崎さん、苦手なんて嘘じゃないっすか!!!」 「苦手なんて一言も言ってない。」 「うわあああああ!!初めて城崎さんに勝てると思ったのにぃぃぃ!!!」 城崎は最初の不機嫌は何だったのかと疑問に思うレベルで強かった。 経験者とかじゃない。達人だろ。 「城崎、ゲーム好きだったのか?」 「好きなわけではないです。昔、葉月が友達とテレビゲームよくしてて、友達帰ったら俺を相手に練習してたんですよ。負けたことないですけど。」 「そうなんだ。」 「あ、先輩また最下位。」 「あー…、もう。難しいよ、これ。」 俺以外のみんながゴールして、俺はゴールも着かないまま強制終了。 センスなさすぎて泣けてくる。 でも、なんとなくルールはわかってきた。 毎回ランダムに変わるコース。 3周したらゴール。 ただ速さを競うだけじゃなくて、アイテムボックスを取って、自分にバフをかけたり、相手に当てて妨害したりする。 「面白いな。」 「負けてても面白い?」 「失礼だな?!じゃあ城崎、やり方教えてよ。」 「いいですよ。ここおいで。」 「うわっ?!」 城崎の脚の間に座らされ、城崎が後ろから手を回して、コントローラーを握る俺の手に重ねる。 何これ…! 抱きしめられてるみたいでドキドキする。 「いきなりイチャつくなよ。」 「だって、先輩が教えてほしいって。次のレース、俺抜きにして。」 「はいはーい。」 城崎を抜いてNPCを追加して、レースは始まった。 城崎の指が、俺の手を操作して、どんどん順位を上げていく。 「ここでアイテム取って、………あいつに向かって投げる。………これはボタン押しながら後ろにつけて走る。」 ヤバい。集中できない。 耳元にかかる息遣いや、城崎の指の動き、あと脚の間に座ってるからどうしてもソレが気になっちゃうっていうか…。 あー、もう。俺のバカバカ。 「先輩、勝ちましたよ。」 「へっ?!」 「ぶっちぎり1位。」 画面を見ると、俺のキャラクターは両手を上げて喜んでいるけど、涼真やちゅんちゅんはまだレース中。 一位じゃん…、すげぇ…。 「ズルいですよ、望月さん!卑怯だ!!」 「先輩、やり方わかった?」 「う、うん…。」 本当は心ここに在らずで全然聞いてなかった。 けど、そんなこと言えるはずもなく、俺は首を縦に振った。

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