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あ…れ……? 嫌なはずなのに、挿れられてから嫌悪感が消える。 いや、まさか。 でも、もしかしたら…。 「……城…崎…?」 ズンズンと奥を突いて動いていた身体が止まる。 「へぇ。分かったんだ?」 「!!」 「さっきまであんなに嫌がってたのに、挿れられたらやっぱり欲望には抗えないかぁって諦めかけてたんだけど。」 目元を覆っていたネクタイを外され、視界に現れたのは城崎だけだった。 城崎以外の声の主はどこにも見当たらない。 「さっきまで……」 「あぁ。AVの録音ね。」 「え…?」 「俺が俺以外の誰かに先輩のこんな姿見せるわけないでしょ。少し考えたら分かることなのに、先輩はおバカで可愛いね。」 「っ♡」 城崎はくすくすと笑いながら、俺の中を揺さぶる。 さっきまでほど感じないのは、冷静になって媚薬の効果が切れてしまったのだろうか? というか、俺は今まで試されていたってこと…? 「城崎……、脅かすなよ。ビビっただろ…。」 「ちゃんと俺の形を覚えてて偉いね。そこは褒めてあげる。」 「そこはって何だよ…?まさかまだ怒ってんのか…?」 「怒ってるも何も。先輩が好きって言ってくれるのを待ってるんだけど?」 やっと目を覚ましてくれたと思ったのに、城崎はまだ冷たい目をしていた。 好きって…、言いたいよ、俺だって……。 「…っ!………!!」 「そんなに言いたくない?」 「違っ…!城崎、……っ!!」 やっぱり声には出なくて、焦っている俺を見て、城崎は表情を歪ませる。 どこから出してきたのか、包丁を手に取り、側面を俺の腕に当てる。 「先輩の両腕をさ、切り落としたらどうなると思う?」 「…っ!!」 「誰も抱きしめられなくなるでしょ。」 刃を少し肌に当てられると、スッと切れて血が滲む。 「何…考えて……」 「両足を切り落としたら、ここから動けなくなるね。そしたら、俺が離れない限り、ずっと俺のそばに居られるよ。」 「城崎…っ?」 「ペニスも切り取る?二度と女を抱けないように。」 「なぁっ!城崎っ!」 城崎は虚な目をしていて、俺が呼びかけてもちっとも反応しなかった。 想像もつかないようなことばかり言う。 怖い。 城崎が怖い…。 「あー…、でもそっか。心臓止めちゃえば、先輩の最後の記憶は俺になるよね?そうすればいいんだ。その後俺もすぐに逝けば、先輩と一緒の場所に行けるかな?」 「なぁっ!なあってば!!」 「先輩、俺のために死んでくれますか?」 「城崎…っ!城崎、嫌だ!死にたくない!!」 城崎は包丁を振りかぶって、最後に優しく俺に微笑んだ。 「愛してるよ、先輩。」

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