123 / 128
10-2
翌日、一日予定のなかった俺はダラダラと日中を過ごし、19時にクリニックへ着くよう家を出た。
中へ入ろうとすると、入れ違いに二人の女性客が出てくる。
「ヤバい!超かっこよかったよね!!」
「でもなんかちょっと素っ気ない感じだったよね〜。」
「そこがいいんじゃん!私なんとかボディタッチできないかなぁって結構頑張ったんだけど、全部かわされたし!」
「あはは。それ脈ないじゃん〜!」
「これから通うの!いつか心開かせて見せるんだから!」
へぇ……。
モテるんだ、施術師。
いや、何人働いてるか分かんないし、俺をマッサージしてくれる人は違う人かもしれないし。
「すみません。19時に予約した望月です。」
「…!!ようこそ!お待ちしておりましたっ!」
入ってすぐ、笑顔が眩しい若いイケメンスタッフが出迎えてくれた。
素っ気ない感じではないから、さっきの女性客が言ってた人ではなさそうだけど、この人も相当のイケメンだぞ…?
一体何人イケメンいるんだよ、このクリニック。
「本日望月様の施術を担当させていただきます。院長の城崎です。」
「あ、昨日の電話の…」
声ですぐに分かった。
さっきは少し上擦っていたから分かりにくかったけど、落ち着いて話しているとやっぱり好きな声だな…。
院長先生だったんだ。
「昨日は確認不足で不快なお気持ちにさせてすみませんでした。」
「いやいや、全然不快になんて思ってないですよ。」
城崎さんと少し話をした後、施術前の問診票を記入する。
どこが凝ってるとか、どんなマッサージをしてほしいとか、施術中話しかけてもいいかどうかとか、そんな感じの。
「書けました。お願いします。」
「ご案内いたします。こちらへどうぞ。」
城崎さんに案内され、施術室に通される。
淡いオレンジの光で、アロマオイルのようないい匂いが広がっていて、めちゃくちゃリラックスできそう…。
「施術の準備をして参りますので、こちらに着替えて、こちらを飲み終わったら、台にうつ伏せになった状態でお待ちください。」
「これって何ですか?」
「こちらは当クリニックで施術前に飲んでいただいているハーブティーです。体も心もリラックスした状態で施術をお受けできるようにご提供させてもらっております。」
「へぇ〜。」
そんなのあるんだ。
グイッと飲み干すと、少し甘い味がして、不味くはなかった。
カーテンを閉めて服を着替える。
専用着かぁ。初めて着るな…。
「すみません。この服の下って、下着だけ履いておけばいいですか?」
「いえ。下着も何も履かず、直接専用着にお着替えください。」
「え…?」
整体ってそうなの?
ここ怪しい店じゃないよな??
「着替え終わりました?」
「あ…、えっと…、はい…。」
「開けていいですか?」
「あっ…、待っ…!!」
カーテンを開けられ、城崎さんと目が合う。
一応もう着替えてるし、別に恥ずかしいことなんて一つもないはずなんだけど…。
「スースーします…。」
「あはは。ノーパンなんてあまり機会がないですもんね。ここでは気になさらなくて結構ですよ。」
「はい…。」
城崎さんに背中を押され、施術台の前に移動した。
ともだちにシェアしよう!