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第5話

 昼間の日差しを溜め込んだ道路。あっちでもこっちでも唸りをあげる室外機。四方八方からの熱気にうんざりしながらコンビニにたどり着けば、食欲はとっくに失せている。  食の細さも男らしさから離れる原因のような気がして、静流はむりやり弁当コーナーのプラスチック容器に目を凝らした。冷たい麺類ならいいか。手を伸ばしたところで入口のチャイムが鳴って、外の熱気が静流の背中にもわりと当たった。 「しーちゃん?」  高い位置から降ってくる声に振り向けば、白い歯を見せて笑う陽介がいた。額に光る汗の粒。夏の塊。 「あーそれ晩ごはん? お母さん今日も夜勤なの?」 「お前なんでそんな汗かいてんだよ。寄るな」 「メシ食いながらジャンプの発売日だって気づいてさ、ローソン行ったら売り切れで、セブンに走ったらそこにもなくて、で、ここ来た。てか、焼き肉丼うまそー。俺も買おっかな」 「お前いま、メシ食った言ってたよな?」  「別腹べつばらっ」と歌うようにレジに向かう陽介に呆れながら、静流もあとに続く。汗で張りついたティーシャツが、広い背中の筋肉をくっきりと浮かび上がらせるのに目を逸らしながら。

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