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第7話

 静流の答えを待たずに、陽介はページの女の子たちを指でなぞりながらポツリと呟いた。 「俺ね……、俺、どの子にも萌えないんだ。なんでだろ? おかしいよね?」  突然の告白に驚いて精悍な横顔を見つめれば、その陰に目を離せなくなってしまう。視線に気づいた陽介と目があって、それなのに逸らせない。 「しーちゃん……」  掠れた声が聞こえたときには瞳を閉じていた。息を止めて受け止めたのは、少しかさついた陽介の唇。 「な、んで?」 「わかんない。しーちゃんの顔見たら、キスしたいって思った」  開いたままのジャンプが、陽介の膝から落ちた。そして静流は陽介の腕の中にいた。厚い筋肉を突き破るような、速い鼓動が静流に伝わってくる。 「や、だ」  再び重なってきた唇はまるでマウンド上の陽介みたいで、不遜に静流の口腔を攻めてくる。 「っん……」  苦しくて次いだ息と共に、陽介のにおいが静流に流れ込んできた。ナッツじゃなく、日向でもなく、汗のにおい。陽介の、におい。

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