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第8話

 とたんに唇から大きな熱の塊が生まれて、背筋を通って下腹部にすごい勢いで落ちていった。熱くなった場所から飛び散った火玉が、じわじわと胸を焦がしていく。  嫌いじゃなかった嫌じゃなかった。陽介のにおいが怖かったんだ。こうやって、コントロールできない気持ちと体のスイッチを押されてしまうから。 「しーちゃん、俺ね、しーちゃんが好きなんだ。こんなふうにしたくなるの、しーちゃんだけだから」 「……うん、うん」  夢中で陽介の唇にしがみついて、熱くて甘い口のなかを貪った。腰を抱き寄せられソファに倒されても離したくない。 「あ……」  ティーシャツの裾から陽介の手が潜り込んできて、胸の尖りをさするように撫でた。毎日ボールを投げている手のひらは、厚くて硬くてざらついている。  今まで知らなかった刺激に、情けないほど頼りない声が出てしまう。唇同士が音をたてて離れ、離れたかと思ったら尖りを舐められた。 「や、だ。そんなとこ……女じゃないんだから」 「でもしーちゃん、とろけそうな顔してるよ?」  上目使いの陽介に見つめられて静流の頬が爆発したように赤く染まる。それがまた恥ずかしくて体を捻った。  

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