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第43話
「じゃあ相良さん英語上手なんですね」
たしかミラコッタは英語を話せるのが入社の最低条件だと聞いたことがある。
相良さんは少し照れたように笑って。
「A little«ちょっとね»」
と答えた。発音、すごく上手。謙遜してるけど、きっと英語喋れるんだ。
「大学が英文科だったからね……でも、ネイティブには到底かなわないよ。職場にアメリカ出身の同僚がいるんだけど、口喧嘩でもすぐ負けるくらいだよ」
上には上がいるんだなぁ。相良さんでも勝てない人っているんだ。
「雛瀬くんは? 今やってる仕事は好き?」
僕は、少し息を吐いてから。
「大好きです」
笑顔でそう答えた。ほんとうに、心の底から好きだから。すると、相良さんの動きがぴたりと止まって。コーヒーを片手に動かなくなってしまった。
「あ、ごめん……雛瀬くんがとびきりの笑顔だったから」
そんなにだったかな。
「あ、もうこんな時間か。夜ご飯は宅配でも取らない? 俺1人じゃ食べきれないし……1人で飯食うのは寂しいからさ」
僕はこくりと頷いた。1人の食事はもう何度も経験してきてる。美味しいものなら、2人で食べたらもっと美味しい。それに、相良さんの選ぶものならきっと美味しい。
それから、相良さんが見せてくれたのは僕なんかじゃ入れないような一見さんお断りの割烹料理店の宅配メニューだった。白い紙に筆ペンで書かれたそれは達筆で、僕には読めない字もあって。しかし相良さんはそれをなんなく読みこなしている。
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