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第44話

「さぁ、食べてごらん」 「いただきます」  相良さんと囲む夕食は心温まって。2人で最近のニュースの話とか、趣味の洋楽の話で盛り上がって。ほかほかのお赤飯は体を満たしてくれたし、松茸のお味噌汁はすぐに飲み干してしまうほど美味しかった。僕はすぐにお腹がいっぱいになって、1人前も食べきれなかったけど相良さんが明日の朝の分にとラップをして冷蔵庫に入れる手伝いをした。そのあと、簡単に後片付けをして2人でまたソファに座った。 「そうだ。雛瀬くん。これ飲んでみない?」  相良さんが見せてきたのは、黒い瓶。 「これって……山梨の有名な葡萄園のワインですよね。1本80万円くらいする」  僕はテレビで見たものと同じものを見て、いささか驚いた。けど、相良さんが持っているものなら腑に落ちて。一緒に飲むことになった。  グラスに紫色の液体が流れて。芳醇な葡萄の香りがたちこめる。カチン、とグラスを合わせて1口含んだ。 「おいし……」  舌先から流れる苦味と、すっきりとした後味。僕は夢中になってごくごくと飲んでしまう。相良さんはそんな僕を見て微笑んでいた。  あれ……なんか、頭ふわふわする。体の力が抜けて。嘘、記憶ない。お酒で記憶飛んじゃった? 今までそんなこと1度もなかったのに。……ん? なんか熱くて……。  眠たい目をこすって、瞳を開ける。 「っ」  唇が見えた。艶のいい薄い唇。僕は相良さんに抱きしめられてベッドに寝ていた。相良さんの心音が聞こえてくる距離で。トクトクトクトク。規則正しい心音。どうしてこうなったんだろう。相良さんは寝ているのか、身動きひとつしない。 「ちはや……」

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