46 / 276

第46話

「おじさんの体臭のついた枕をかいではいけません」 「……ごめんなさい」  相良さんが苦笑するから。それにつられて僕も笑って。悪戯がバレた子供みたいに肩をすくめる。 「もう24時か」 「あの、僕そろそろ帰ります。終電ならまだあるし」  リュックの中の荷物を整理して言う。すると、温和だった相良さんの雰囲気ががらりと変わる。 「今夜は泊まっていって」  鋭い眼光。glareが出てるんだ。わざと、出してるのかもしれない。その視線から逃れることなんて、できなくて。僕は身体中の血流がざわめく音を聞きながら、こくこくと頷いた。 「いい子」  肩を撫でられる。大きな掌。お日様みたいにあったかい。 「おやすみ」 「おやすみなさい」  今日は、背中合わせで眠った。相良さんが背中を向けてきたから、それに合わせて。すごく濃い1日だった。相良さんといると、時間が溶けてしまうみたいだ。仕事の話も真剣に聞いてくれたし……明日、もう1回お礼を言おう。そう思って、目を閉じた。

ともだちにシェアしよう!