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第51話
両目から溢れるものは止まらなくて。鼻水もたらたら流れてくるし。きっと今の顔、酷いんだろうな。僕は相良さんの指をちゅぱちゅぱと吸っては舐めてを繰り返した。早く、僕の失敗を許して欲しい。いい子にするから。お願い、僕を許して。
「ふふ。赤ちゃんみたいでかわいいよ」
相良さんの瞳の奥にぎらりと光るものが見えた気がした。
相良さんの指が口内から引き抜かれる。
「雛瀬くんがいっぱい舐めるからふやけちゃったよ」
そう言うと、少し機嫌を戻したのか微笑みを浮かべる。僕はそれを見て安心した。
「よくできました」
ぽん、と頭を撫でられる。さっきまでとうってかわった相良さんの対応にびくびくとしてしまう。相良さんは固まってしまった僕の体を抱き起こして膝の上に乗せてくれた。後ろから抱きしめられる体勢に僕は顔が熱を持つのを感じた。ぎゅ、と抱きしめてくれて。背中には相良さんの熱が。じわじわと広がって、きつく縛った心の紐を解いてくれる。相良さんが指の腹で僕の涙をすくう。
「……僕のこと、許してくれますか?」
しばらくしてから、涙も鼻水も止まった頃僕は後ろを振り向いて聞いた。やばい。今にも涙が出てきそうだ。「許さない」なんて言われたら立ち直れる気がしない。
「今回は特別だよ……。今度から俺の私物を勝手にいじったらだめだからね」
僕はうんうんと大きく何度も頷く。でも、ある疑問が頭をもたげてきて……よせばいいのに、僕は自分から聞いていた。だって、相良さんが今はとびきり優しいから。
「これって……相良さんはもう怒ってないってことですか?」
僕の質問の仕方が悪かったんだろうか。相良さんはきょとんとして僕を見下ろす。そして、目を伏せて答えてくれた。
「いましてるのは、雛瀬くんへのアフターケア。この言葉知らない?」
僕は中学生の頃に保健体育で学んだ第2の性についての教科書を思い出す。たしかDomがSubにプレイした後に、なにかをしてくれるって話だった気がするけど……それが、これ?
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