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第59話

「こういう関係は嫌?」  相良さんの目が、深い色を帯びていく。その瞳は僕のことを見つめているようでいて、僕以外のものを見ているかのような。そんな気がした。 「嫌とか嫌じゃないとか……わかりません」  だって、こういう関係は初めてだから。恥じらいながら口を閉ざしていると、相良さんが僕の頭を囲うように覆いかぶさった。こんな近くじゃ、まともに息なんてできないよ。 「雛瀬くん。自分の顔、見てみる?」  カシャ、と音が鳴って。気づいたら相良さんにスマホで写真を撮られていた。ゆっくりと写真を僕に見せてくる。 「っ」  そこには顔を林檎のように真っ赤にさせて目を見開く僕の姿があった。期待しているような視線。僕、こんな顔してたんだ。 「俺とこういうことするのは嫌?」 「んんっ」  息が、止まった。ふに、とした感触が唇に当たって。何度か、首の角度を変えて。くっついては、離れて。それを3度繰り返して。相良さんは目を伏せて僕にキスをする。相良さんの睫毛、長くて綺麗……。鼻筋も整っていて羨ましい。口元の力が抜けてしまって、恥ずかしいのにこの先が知りたくてたまらなくて。僕は自ら口を開いた。彼は目を軽く見開くと、嬉しそうに僕の口内に入っていった。追いかけっこをするように舌を舐められる。舌先がジンとして、体の熱がぐんと上がっていく。頭、とろけそう……。相良さんの舌が僕の弱い所を執拗に撫でた。前に指先で何度も擦られたそこは、僕の知らないうちに性感帯になってしまったらしい。上顎の裏側。普段触れることの無いそこが、相良さんの舌で何度もなぞられて。気持ち、いい。 「……目、とろんとろん。かわいいよ」

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