60 / 276

第60話

「はぁ……う」  息継ぎの仕方なんかも知らないから、僕の呼吸は絶え絶えで。相良さんは余裕があるのかもしれないけど。こういうの、僕は初めてだから。 「おねむかな?」  ぽんぽんと髪を撫でられる。その触り方、好き。もっと、してほしい……。僕は意識的に相良さんの手のひらに頭を擦り付けた。相良さんはちょっと息を詰めたみたいで、自分の髪をかるくかいた。 「それ以上俺のこと刺激しないで」  「止められなくなるから」そう言って、僕の身体を抱き起こした。お姫様抱っこで寝室に運ばれる。もう、何が何だかわからない。突如襲ってきた眠気に全て持っていかれてしまう。 「続きはまた今度ね」  僕は続きがあるんだと思って、瞳を閉じる。相良さんの手のひらが僕の髪を何度も撫でているのを感じて、夢の中に誘われていった。

ともだちにシェアしよう!