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第62話

 仕事を終えて向かったのは相良さんの家。今日は前から約束していた。会うのは5日ぶり。相良さんとキスをして以来だ。「会って話がしたい」そう言われたら、断ることなんてできなくて。メッセージが来て数秒以内に「行きます」と返事をしていた。  玄関の前でインターホンを鳴らす。ピンポーンと機械音が鳴って。僕の心臓の音はだんだんと大きく早まっていく。  がちゃ、とドアが開いて相良さんが姿を現した。 「こんばんは」  僕が挨拶すると、相良さんは1度微笑んでから中へ通してくれた。靴を脱いで上がらせてもらう。 「座って」 「……はい」  ソファに座ろうとした僕を相良さんが止める。 「ソファじゃなくて、こっち」  見せてくれたのは白い色の大きなクッション。これ、人が乗るとその形に変形するっていう有名なやつだ。高いって聞いたけど……。僕はゆっくりとソファにおしりをつけた。白いからおだんごみたいで可愛いかも。僕の体は、ずももももとソファに沈んでいく。相良さんはというと、僕が座るクッションの前であぐらをかいて座った。 「雛瀬くんに似合うと思って買ったんだ。座り心地はどう?」 「え……僕のために?」 「うん。ネットショッピングしてたらこのクッションが目に入ってさ。雛瀬くんに座らせてあげたいと思ってね」  照れくさそうに笑う相良さん。どうしてこんなに僕に尽くしてくれるんだろう。僕は不思議でたまらなかった。 「じゃあ、本題だけど」  相良さんの瞳が僕を見つめる。透き通るような黒。僕は何を言われるんだろうと思って、体に緊張が走った。

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