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第63話

「今日から雛瀬くんを独り占めしてもいい?」 「どういう……意味ですか」  独り占めって、何? 僕が小さな声で聞くと相良さんはにこりと笑う。 「俺を君のDomにさせて」 「……えと……その」  これって、あれかな。お誘いっていうのかな。DomとSubが主従関係を結ぶことをmate《メイト》と呼ぶ。これは、DomがSubを心身ともに支配することだ。この関係が上手くいくかは個人の素質や感情次第だが、最終的にはお互いが良いパートナーだと思えばColler《カラー》と呼ばれる首輪をDomが贈り、Subの首に付けて契約が成立する。Collerを付けたSubは、完全にDomの支配下に入ることになる。心も、体も完全にDomの言うことを聞くことになるのだ。それが最上の幸せだと言う人もいる。僕はそういったものとは縁がなかったから、相良さんの言ったことが信じられなくて、言葉を失う。  いいの? 僕が相手で。 「お願い。俺とmateになって」  縋るような瞳。僕は声が出ない代わりに、なんとか気持ちを伝えようと思って相良さんの手を握った。ぎゅっと力強く。それを了承の意味と捉えたのか、相良さんが微笑む。笑いじわが見えて僕も安心する。 「じゃあ、改めてよろしくね」 「よろしく、お願いします」  つっかえつっかえの言葉。でもちゃんと伝わったらしい。相良さんすごく嬉しそう。目元が笑ってる。 「おいで」  僕は言われた通り、目の前にいる相良さんの元へ這っていく。猫みたいに、足音を立てないで。 「今日は大人のお勉強しようか」 「?」  相良さんはときどき、難しいことを言う。

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