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第70話

「……雛瀬くんが良ければ、手でしてくれないかな。雛瀬くんの手つきすごく優しいから……安心する」  ちょっと照れたように言う相良さんを見て、僕は「もちろんです」と答えてしまう。我ながら忠犬みたいだ。  相良さんが僕の身体を横抱きにしてくれる。背中に回された手は大きくて。僕は相良さんの怒張を手で包み込む。大きいままだ。このままじゃ、辛いだろうな。人差し指と中指で裏筋を撫でる。こうされると、相良さんは眉をぴくりと揺らす。きっと気持ちいいんだ。僕は1度、手のひらを舐めて自分の唾液をつけた。滑りをよくするためだ。それを見た相良さんが頬を赤く染めている。 「は……ごめん。もう出る」  相良さんは僕の背中をぎゅっと抑えて果てた。相良さんのスウェットの上に白い液体が飛び散る。色が濃くて……量が多い。 「ありがとう。すごく良かった」  しっとりと汗ばんだこめかみが、てらてらと光って。僕も嬉しくなって相良さんに抱きついた。それを彼はぎゅっと抱き締め返してくれる。 その後は2人してベッドの上でじゃれついた。相良さんが僕の身体をこちょこちょとするから、僕も反撃する。2人で笑って、ときどきキスをして。幸せだと思った。今までの人生の中できっと1番幸せ。僕は相良さんのことを大切だと思っている。相良さんも僕のことを大切に扱ってくれる。片思いじゃなくて両思いの関係が心地いい。今までは友達関係でさえ、僕の片思いのことが多かったから。 「これでもう雛瀬くんは俺のものだね」  相良さんの心音がとくとくとく、と規則正しく聞こえる。耳元に相良さんの胸があるから、ひどく落ち着く。 「じゃあ、相良さんは僕のものですね」  言うのは恥ずかしかったけど、事実だからいいかと思って言う。相良さんはくすくすと笑って僕の目にかかった前髪を手ですいてくれる。その晩は2人で手を繋いで眠った。指先から「好きだよ」と言われているように感じて、僕は安心して夢の世界へ旅立てた。  こんな幸せが僕に訪れるとは思ってもみなかったから。目を閉じて眠っている相良さんに呟いた「ありがとう」という言葉はあなたに届いただろうか。

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