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第73話

「僕、手伝います。あんまりたいしたことはできないかもしれないけど……」  僕の申し出を相良さんはにこ、と笑って受け取ってくれた。 「じゃあ、サラダを持っていってもらおうかな。それと小皿とグラスも」  相良さんの後ろをてくてくとついていき、キッチンの台に置かれたものをテーブルに運ぶ。2往復して指示されたものを全部持っていけた。相良さんはその間オーブンの中を伺いながら、「よし」と頷くと台の上にローストチキンを置いた。ローストチキンは2人で食べ切るには大きすぎるような気もしたけど、すごく美味しそう。口の中で唾液が出てくるのがわかる。焦げた部分なんかはかりかりしてて食感が楽しそうだし、じゅわじゅわと溢れてくる油もきっと濃厚だ。相良さんはローストチキンを載せた白い丸皿を両手で抱えてテーブルに置いた。そして、今日のメインのドリアをローストチキンを焼いていたオーブンとは別のところから取り出した。焼き加減がちょうどいい感じだ。上に乗っているチーズはとろとろで……熱々で美味しそう。僕のお腹は正直にぎゅるると鳴った。ちょっと離れた距離にいるから聞こえてないよね。そう思って油断していたら 「お腹空いてたんなら、ちょうどよかった」  ドリアを持った相良さんが僕のことを見下ろして言う。うわ、地獄耳。 「じゃあ、食べよっか」 「はい……いただきます」  フォークとナイフの持ち方って、これで合ってる? おそるおそる手に取り、相良さんを盗み見る。たぶん、大丈夫。相良さんも同じ持ち方してるから。

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