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第83話
「ん」
相良さんからのキス。啄むように何度も繰り返されるそれは心地よくて。僕はすっかり脱力してしまった。ぬる、と口内に侵入してきた相良さんの舌が僕の舌先をつつく。僕はそれに応えようと舌を動かすけれど。お酒で頭もくらくら、身体もふらふらしているせいか思ったように舌が動いてくれない。
「……雛瀬くんの充電切れちゃったね」
口を離してから相良さんがそう呟いたのも、うつらうつらとする記憶の中ではぼやけていて。僕は、相良さんの腕の中で意識を手放した。このあたたかな寝床なら、安心して眠れる。そう信じて、疑わなかった。
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