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第90話

 カフェを後にして、最後はお土産屋さんに寄ることにした。金森さんにマカロンのお礼をしようと思って、クッキーを選んだ。水族館にいるいきものがプリントアウトされた女子向けのクッキー。味はプレーンで10枚入り。女の子1人には多いかもしれないけど……食べきれなかったら他の人に配ってくれるよね。そう思って買い物カゴに入れた。 「雛瀬くん。なにかおそろいで買おうか」 「……はい」  僕から言おうと思っていたのに。相良さんはいつも先回りする。2人で店内を歩いてこれもいい、あれもいいと迷っているうちにふと、あるものを見つけた。 「これ、かわいい……」  僕の目に入ってきたのは、あざらしがモチーフになっているキーホルダー。青とピンクの2種類がある。相良さんは「どれどれ」と言ってそのキーホルダーを手に取った。 「いいね。俺が青でもいい? 雛瀬くんはピンクは嫌?」 「大丈夫です。相良さんとおそろいなら何色でもいいです」  正直な気持ちだった。相良さんは、ふ、と笑うと買い物カゴにキーホルダーを2つ入れて僕の手から奪ってしまう。また、お会計は相良さん持だ。あとで金森さんに渡すクッキー代だけは出さないと。お会計している間、店内の外で待つように言われベンチに座る。ちょっとはしゃぎ過ぎたかな……年甲斐もなく。もう28歳は十分な大人なのに……気持ち悪いって思われなかったかな。そこだけが少し不安だ。  車に乗って相良さんの家に帰る。風がひどく強くて、車体が揺れることもあったが無事に家にたどり着いた。

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