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第100話

「じゃあ、2回目いくね」 「……はい」  薄いピンク色に染めるためには、ブリーチを2回しなければならないらしい。なんとなく、頭の表面がふつふつ沸騰するような感じがするけど、痛くて我慢できないほどではない。僕は大人しく志麻さんの施術を受けていた。2回目のブリーチも終わり、いったんシャワーでブリーチ剤を洗い流すことになった。 「少し染みるかも」 「……はい」  ちく、と頭の表面が痛む。ちょっとひりひりするくらいだから、我慢できそうだ。相良さんのお願いだもの。叶えてあげたい。そして、僕も髪の毛の色を変えてみたい。きっと、自分の中でも何かが変わると思うから。  水を拭き取られ、いよいよカラーを入れる段階になった。相良さんは仕事の電話で外に出ていってしまった。心細い気はするが、仕事の都合なら仕方ない。相良さんもいつでも暇ではないのだ。たまには、自分1人で対処する力も必要だ。 「雛瀬くんは、お仕事は何をしてるの?」  ブリーチをしてくれているときも、お喋りをしてくれた志麻さん。ほんの1時間で距離が縮まった気がする。向こうにとってはただの接客かもしれないけど、僕にとってはとてもレアなことで。僕はすっかり、志麻さんに心を開いていた。 「電話相談員をしています」 「へぇ。どんな仕事なの?」  ピンク色のカラー剤を塗りたくりながら、志麻さんが聞く。僕は、相談支援についての簡単な説明をした。 「すごく素敵な仕事だね」 「ありがとうございます」  志麻さんが笑顔で言うから、僕もつられて笑みが零れる。 「よし。これで後はしばらく放置して髪の毛に色が入るのを待つだけだよ」  鏡で自分の髪の毛を見る。すごくピンクだ……ほんとに、これが自分の髪なの? 「あえて濃く入れてるから、1週間くらいピンクシャンプーをしたら色が落ち着いてくるよ」  志麻さんは僕のことを鏡越しに見つめて説明してくれる。 「ピンクシャンプー?」  聞いたことの無い言葉に反応すると、志麻さんが「これだよ」と、コロコロが付いた作業台の上に置いてある入れ物を見せてくれる。 「……かわいい」  僕は思わずそうもらした。ピンクの液体が透明な瓶型の入れ物になみなみと入っている。

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