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第101話

「シャンプーするときは、このピンクシャンプーを使ってね。普通のシャンプーだと色落ちが早まっちゃうから」 「わかりました。そうしたら、お会計のときに払います」  僕はいくらくらいするんだろうと思いながら、ピンクの液体を見つめる。すると志麻さんはにこりと笑った。 「もう優希が3本買ってくれてるから、お会計のときに渡すね」 「あ、そうなんですね……」  もう買ってあるんだ。なんでもかんでも先回りする相良さんのことをちょっと恨めしく思う。これでは、自分に必要なものを自分で買えないじゃないか。  軽く髪を洗い流してもらう。志麻さんの手先は柔らかくて、繊細で。僕は髪の毛を洗われている間、気持ちよすぎて眠ってしまいそうになった。持ってきてくれたピーチティーは果肉入りでごろごろした食感が楽しかったし、甘くて口が喜んでいた。  ブオォとドライヤーで髪を乾かされる。濡れていた状態と違って、髪色がよく見えた。 「ほら、かわいくなった」  櫛で軽く髪をとかされ、鏡の中の自分と向き合う。全部ピンク。僕と初めて会ったら、「あ、ピンクの人だ」と思われてしまうにちがいない。僕は見慣れない自分の姿にひやひやする。似合ってるだろうか……それだけが心配だった。 「ちょっとアレンジしてみようか」  志麻さんがワックスを手に取り僕の髪の毛に付け始めた。シトラスの香りがつんと鼻先をくすぐる。ものの数分でセットをしてくれた志麻さんは満足げだ。僕の髪は軽くウェーブがかかった状態で、少し軽くなった印象を受ける。雑誌の中のモデルさんがやっていたみたいな髪型に少し嬉しくなる。僕も、こういう格好を楽しんでもいいんだ。そう思って、志麻さんにお礼を言った。

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