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第106話
「……」
相良さんはその薄い唇を横に持ち上げた。そして、僕にとって衝撃的な言葉をかける。
「今日は、自分でシてるところを見せて」
僕の薄い腹を撫でながら、相良さんは僕の瞳をじっと見据えた。有無を言わさない瞳に僕はいとも容易く屈服する。しかし、緊張しているからか手が動かない。
「……できないの?」
そう、問われる。僕は唾を飲み込んで、壁に背をつけて座り込む。体育座りのような格好で足の間で張り詰めているものに触れる。見られている……それだけで先走りがじわ、と滲む。相良さんは澄ました顔で僕のことを凝視している。僕はゆっくりと手を動かし始めた。
「……っ」
恥ずかしさのあまり、いつものように動かせない。
「李子くん。声、我慢しないで」
僕は口元を抑えていた手を離す。自分の部屋で何してるんだろう、僕は。僕は相良さんの指示通り声を漏らす。僕、こんなにはしたない声をしているんだ。静寂の中に僕のものから溢れる音と、僕の声だけが響く。恥ずかしい。恥ずかしい。いっそのこと、相良さんに触ってもらえたらどんなに楽だろう。膝にずり下ろされたパンツと下着。ほぼ裸だ。一方の相良さんは服装も乱れていない。この空間の中で異常なのは僕だけなのだと実感させられる。顔が火を吹きそうなほど熱い。
「ゃ……ぁあ……はっ」
相良さんの瞳は僕を捉えて離さない。その目で見つめられるだけで、僕のものはどんどん膨らんでいく。ぐちゅぐちゅと漏れる足元からの音。頭の中にスパークが飛ぶ。勝手に手が早く動き出す。だめだ……もう……。
「stay《そのまま》」
「……っはぅ……ぁ」
無慈悲なCommand。僕の体はぴたりと静止する。あとちょっとでイけそうだったのに……じんじんと熱をもつそこが痛い。今にも弾けそうなのに。どうして?
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