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第120話

「や……。も、出る、からっぁ……」  僕は限界まで追い詰められる。下半身に全ての熱が持っていかれるようだ。ずくんずくんと疼くものは相良さんの手の中で放たれるのを待ちわびている。 「いいよ」  相良さんが許してくれた。そう思ったら体の力がかくんと抜けてしまって。鏡を白く濡らして果てた。 「あ……」  汗で手が濡れてしまっていたから、つるりと鏡から滑ってしまう。お尻を突き上げる格好で上半身が床についた。あ、だめだ。怒られる……。 「仕方ない子だね」  相良さんのため息が背中に重くのしかかってきて、胸が苦しくなる。ごめんなさい。ごめんなさい。後ろを見上げて謝る。 「相良さ……ごめんなさいっ」 「……俺がいいよって言ったら、李子くんはどうするの?」  思ってもみなかった返事に体が固まる。僕は許してもらえたら何をするんだろう。頭の中でいくつもの考えが浮かぶ。僕は気付かぬうちにそれを口走っていた。 「相良さんにキスします。好きって言います。相良さんを気持ちよくします。相良さんを独り占めさせてくださいっ」  最後の方はもう金切り声に近くて。僕ははぁはぁと肩で息をする。こんなに自分の思いを伝えたことは今までなかった。  相良さんが瞳を大きく見開いた。そして、しばらく沈黙する。 「……じゃあ、許してあげる」 「っ」  微笑みを浮かべた相良さんに抱きつく。たぶん、犬だったら尻尾を振っている。相良さん。相良さん。僕が体重を乗っけて抱きつくと、相良さんはその逞しい腕で抱きとめてくれる。 「目元うるうるしてる。泣きそうなくらい嬉しいの?」  僕は返事をする代わりに、もう一度ぎゅっと相良さんに抱きついた。相良さんの大きな背中には僕の手は届かなくて。肩甲骨のあたりを掴む。相良さんは最初、僕のことを抱き寄せたりはしなくて勝手にさせてくれてたけど、だんだんと我慢できなくなったのか僕の背中に腕をまわしてきた。

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