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第121話
「ほんと、李子くんかわいいよ」
吐息と共に吐き出される言葉に、僕はまた嬉しくなる。
「ちょっと落ち着こうか」
「……ん」
相良さんがとんとん、と僕の背中をたたいてくれる。その振動が優しくて、あたたかくて。僕は興奮状態からやっと抜け出せた。その分、自分の積極的すぎる言動に驚いてしまって、恥ずかしさがこみあげてくる。飼い主に褒められたい犬みたいだった。こんなにも、僕は相良さんのことが好きだったんだ。
「歩ける?」
「た、ぶん」
僕は相良さんに掴まって立とうとする。けれど、ふにゃふにゃになってしまった足腰では1人で立つこともできなくて。最終的に僕は相良さんに抱っこされてベッドの上におろされた。
「この景色を見せたかったんだ」
「っ……」
相良さんが黒のカーテンを引き上げていく。そこから見えたのは、きらきらと光る夜の海。月の光に照らされて青白く光っている。水平線に浮かぶ船のライトが海に浮かんで滲んだ光を放っている。紺碧の空には、小さな星が瞬いていてとっても綺麗。僕は言葉を失ってその景色を眺めていた。
「俺の1番お気に入りの景色だから、李子くんに見せたかったんだ」
相良さんは僕の背中から抱きしめてくれる。ちゅ、と軽いリップ音を出して髪に口付けを落とす。
「李子くんの髪、いい匂い。食べちゃいたいくらい」
かぷ、と僕の耳を甘噛みしてくる。僕はくすぐったさに肩を揺らした。しばらくそうしていたが、相良さんが唐突に
「お風呂入ろっか」
と囁いてきた。僕は顔に熱が集まるのを感じながら相良さんの手を握る。それを同意と受け取ったのか相良さんが僕を抱っこして、バスルームに連れていく。服を脱がされ、僕は裸になった。相良さんも服を脱いでいく。Tシャツの下から現れた体は、筋肉が盛り上がっていて男らしい。引き締まった腹筋なんて、木琴みたいだ。下半身は……恥ずかしすぎて見ることができなかった。
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