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第123話

 きっと値が張るであろうシャンパンを無駄にしてしまった。僕はそのことが申し訳なくて両腕を曲げた膝の上で組んで目線を落とす。 「李子くんのせいじゃないよ。でも俺はたまにこういうことがしたくなる人間だから……許して?」  そんな甘い瞳で言われたら、許してしまう。僕は「許します」と口にしていた。それを聞くと相良さんの口端が上がる。 「李子くん……ほんとに小さくてかわいい」  僕の頭のてっぺんに顎を乗っけて相良さんが呟く。僕にとっては褒め言葉じゃないんだけど……。相良さんが喜んでくれるならいいか。 「手なんか俺と全然大きさ違うし」  相良さんに手のひらを掴まれる。重ねられた手の大きさが全然違うから、僕も驚いた。僕の手ってこんなに小さかったんだ。子どもと大人くらい違うではないか。 「李子くんは自分の体が嫌いかもしれないけど、俺は好きだからね。それを忘れないで」  うなじに、キス。相良さんに触れられると途端に力が抜けてしまう。安心しているんだと思う。相良さんから与えられる熱が、想いが僕の胸をあたためてくれる。

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