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第142話

「シャワー浴びてきなよ」  プリンを食べ終えてしばらく。2人でテレビを見ていたけど、急に相良さんが声をかけてきた。 「わかりました」  僕は相良さんの指示に従う。もう、Subだからという理由だけじゃないかもしれない。僕は相良さんからのお願いなら何でも応えたいから。自然と、心と身体が相良さんの言葉に従うんだ。  熱いシャワーの飛沫を浴びて、考えるのは相良さんのこと。mateがどんな流れで関係を作っていくのか詳しくは知らないけど、心の繋がりも大事だし、身体の繋がりも大事だと聞いたことがある。  僕達ははたして今、どんな段階にいるんだろう。今日みたいな身体の繋がりはできていると思う。なら、心の繋がりだって……きっとできてる。僕は相良さんのことが好きだし、相良さんもきっと僕のことを大切にしてくれている。  でも、たった1つだけ。引っかかっているのは、前に相良さんが寝ているときに呟いた「ちはや」という言葉。僕の名前を言うと思ったのに、相良さんが呟いたのは別の言葉だった。それと、志麻さんからの言葉だ。 『こんなに甘やかされてたら、いつか自分で立てなくなるよ』  あれはどういう意味だったんだろう。僕が相良さんに甘えすぎてるから、苦言を呈した? 相良さんの友達として、相良さんに負担をかけないために僕にアドバイスをしてくれた?  考えてても一向に答えは出ないから。僕はそれに対して蓋を閉めていた。  触れなくてもすむものなら、触れないように。  自分から泥の中に入っていかないように。きっといい事じゃないってことだけは、わかるから。  僕のためにも、相良さんのためにも聞かないのが1番だってことがわかる。でも、気になる。ほんとうは相良さんに聞きたい。けど、怖い。聞いてしまったら僕らが築き上げてきた大切な何かを壊してしまうんじゃないかと思って。不安でたまらないんだ。

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