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第148話

「さて」  相良さん。僕の腰の上に馬乗りになって、スウェットの袖を捲った。光があたる角度が変わったから。ようやく僕は相良さんの表情を見ることができた。 「……っ」  愉快そうに歪められた口。とっても、楽しげだ。 「李子くんは、ちゃんと反省してね」 「?」  僕がわからない言葉を口ずさむと、相良さんは僕の鼻に舌を這わせた。ぬら、と鼻先に熱があたる。角度を変えつつ、やさしく、やさしく舐められている。相良さんおっきなわんちゃんみたい。僕は反省することなんか忘れていた。だってこれは、僕にとってはご褒美みたいなものだもの。僕はつい、嬉しくなって無意識に、いつものように相良さんの首の後ろに手を伸ばした。  ぱしん。  でも、その手は無遠慮にはたかれる。 「だめだよ。今は反省中でしょ」 「ごめんなさ……」  目を伏せて謝る。目と鼻の先。ほんとに近くに相良さんの顔があるから。緊張してしまう。 「っ」  ぱしん。  あ、れ。今度は僕の視界がブレた。じんわりと頬に熱が生まれる。ほっぺた叩かれた? 嘘。  僕は困惑した中でもひとつだけ信じていることがあった。相良さんはこんなことをする人じゃないって。間違えて手がぶつかってしまっただけかもしれない。だから僕は急いで首を持ち上げた。でも、そこで見えたもの。見て、僕は息をつむった。  相良さんが、ひどく、嬉しそうで。悲しそうで。わらっていて。ないているような顔をしていたから。

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