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第151話
「|here《おいで》」
相良さんのCommand。今のは柔らかい口調。僕はすりすりと相良さんの元に擦り寄っていく。
「今日は李子くん。とってもがんばったね」
相良さんに喉の下を撫でられて、僕はごろごろと喉を震わす。さっきまでと打って変わって穏やかな笑みだ。手つきもやさしい。
「ほんとうに、お疲れ様」
ぽんぽん。頭のてっぺんを撫でてくれる。それが嬉しくて、たまらなくて。僕は相良さんに噛みつかれてしまったことなど、忘れてしまいそうになる。
「今日は俺、これから手を出さないから」
ひらひら。相良さんが両手を空中で払う。
「今夜は、俺のこと李子くんの好きにしていいよ」
「ほんとですか?」
うんっていう、深いうなずき。その目元は静かにわらっている。
「とっておきがあるって言ったでしょう。それが、これ」
相良さんは、ちょっと照れたようにはにかむ。ああ、そんなとこも好きなんだ。
「李子くんが望むならお馬さんごっこだってするし、李子くんのことダンベル代わりにしてスクワットするし。……李子くんが望むなら、いっぱいやさしくする」
僕はもう、なんにも頭に浮かばないまま相良さんの胸元に飛び込んだ。
「全部しますっ。相良さんのこと独り占めさせてください」
不意に飛び出た言葉を相良さんはちょっと目を見開いて受け取った。ややあってから、うれしそうにわらう。ほんとに、ほんとに、うれしそうなんだ。
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