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第156話
電話の向こうの彼女は押し黙る。そんなのわかってるよ、そんな声が今にも聞こえてきそうだ。
「彼氏さんのこと、好きなんでしょう?」
僕の言葉に彼女は呆れたように笑って
「うん。だいすき」
そう言った。
その女の人は、これから仕事があるからと電話を切った。大丈夫かな。少し、心配になる。でも、しっかり考えて行動できるタイプの人だと思う。
それよりも何よりも、僕とあまりにも状況が似ている。僕はまだセーフワードを相良さんと決めてはいない。でも、いつかは作らなければならない。お互いのために。
ふと、思ってしまう。僕と相良さんはmateになって半年が経つのに、体の関係が未だにない。くすぐり合いや、きもちいいことはしてくれるけど、きちんと繋がったことがない。
大切にされていると思っていいんだろうか。それとも、僕に魅力がないから、抱いてもらえない? ……僕が、こういったことに不慣れだから、重いって思われてる?
考え出したら止まらなくて。不安だけがもくもくとつのっていく。
ぱちん。
目の前で火花が散ったような。僕は俯いていた顔を上げる。そしたら、そこには神妙な顔をした金森さんがいた。今のは両手を僕の目の前で叩いた音らしい。
「雛〜瀬〜先輩。何回呼んでも反応ないから、心配しました!」
「ご、ごめん。ぼーっとしちゃって」
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