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第168話

「どう?」  僕はふるふると首を横に振る。ただ、しょっぱいだけ。  相良さんは眉を寄せると静かに微笑した。 「say《言うんだ》」  その直後、言葉が喉奥から飛び出た。 「っしょっぱいです」 「そう」  相良さんは満足そうに僕の口から指を退けた。僕は相良さんのことだけで頭がいっぱいになってしまう。    それからは、あっというまで。  相良さんに服を丁寧に脱がされてから、僕は相良さんが服を脱ぐのを見ていた。何も身にまとわずに触れる肌の熱に、言いようのない安心感を覚える。  僕が不安にならないようにするためかな。ずっときすしてくれていた。僕も相良さんの頬を支えてきすを受ける。自分からも舌を伸ばした。僕の下手なきすを相良さんが時折可笑しそうに喉を震わせながら受け止めてくれるのを感じて、身体中が歓喜した。  この人にだったら、僕のあげられるものはなんでもあげたい。  この人のお願いだったら、ぜんぶかなえてあげたい。  この想いは僕がSubだから湧き上がるものなのか。あるいは、恋人に対する純真な従属の表れなのか。もう、どっちでもいいや。相良さんのことが好きなのだという気持ちさえあれば、もうなんにもいらない。  相良さん。きす上手だな。僕は飲み込めなかった唾液を垂らしながら、ぽやと思う。頭の奥がじぃんと痺れて、きすのこと以外何も考えられなくなる。  相良さん。相良さん。すき。だいすき。  そんな想いをこめて、相良さんの背中に手を回した。

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