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第170話
「っぐ」
僕は短く息を吐いた。4本目を突き立てられたところで、僕の体に異変が走り出す。なんか、入口のところジンジンする。それと、奥の方、指先の関節の先っぽがあたって、こそばゆい。
「どう? 痛い?」
相良さんは心配そうに眉を垂らして僕を見下ろす。痛みは……ほとんどなかった。だから僕は「大丈夫です」と返事をした。
ずぷ、と相良さんの指が中から出ていく。押し出すような中の動き。それを感じていると、相良さんの顔がなぜか目の前に近づいてきていた。驚いてしまって、声が出せないでいると頭上からくすくすという忍び笑いが聞こえてきた。
「これ、取っただけだからそんなにびっくりした顔しないで」
ちょこん、と僕のおでこに載せられたもの。その正体がわかって、僕はぼっと湯気が出そうなくらい顔を赤くした。
黒い正方形の袋。初めて見るし、初めて使う。
慣れたふうに、相良さんがその袋を口で噛み切る。中から、薄い乳白色の円形のものが出てきた。僕はそれに目がいってしまって、頭の中が真っ白に染まった。
「そんなに物欲しそうに見られるとなんかな……。残念だけど、今日は俺が使うから。李子くんは、また今度ね」
ふっ、と笑いながら相良さんが自身のものにそれを装着する。その手元の動きが生々しくて僕はごくりと唾を飲み込んだ。
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