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第173話

「……っ」  数分、経った頃だった。身体中の熱が後ろに集まる。相良さんの動きも少しずつ速くなった気がする。ベッドのスプリングがギシギシと音を立て始めた。小説の中でしか想像したことのないシーンに自分がいる。そのことが信じられなかった。 「あ……っ……ひ」  後ろの中の一点を何度も押しつぶされるような動き。なんだろう、そこ。へん。押されると身体の力が抜けてしまう。  僕の口は開いたまま塞がらない。こんな間抜けな顔の僕を相良さんは真剣な瞳で笑わないで見つめてくれる。相良さんの両腕は僕の顔の横に置かれて、その逞しい腕を堪能することができる。囲むような体勢に嬉しくなる。逃がさないよと言われているようで、胸が痛むくらい幸せだ。 「李、子」  肌と肌のあたる乾いた音。それが耳につく。恥ずかしい。恥ずかしい。でも、もっと。して欲しい。 「っ」  ぐ、と相良さんのものが中で一際大きく膨らんだ。腰を引っ張られて相良さんのものが押し込まれる。どくどくと脈打つそれを感じて、胸の奥がきゅうと鳴いた。相良さんは果てる瞬間息を止めて、それから大きく吐いた。余韻を味わうかのように、何度か腰を埋められる。相良さんの雄の本性が見えたようで、僕はさらに相良さんのことが好きになってしまった。 「李子くんの中、すごい」 「……ありがとう、ございます」  満足そうな溜息とともに、相良さんの手が僕の頬を撫でる。一度、彼のものが引き抜かれた。自身のものから薄い膜を外すと、ベッドサイドのゴミ箱に投げ捨てる。  相良さんが、僕の身体を追い越してベッドボードの棚からまたそれを取ろうとしているから。僕はその手を掴んだ。 「そのまま、したいです」  相良さんのこんなに驚いた顔、初めて見たかも。そうして、ふうと息を吐くと僕のことを濡れた瞳で見下ろした。

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