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第178話
遅めの朝食には、フランスパンを切って焼いてくれた。スイス産のクリームチーズに、カナダ産のメープルシロップ。前に、僕の身体に使ったやつ……その熊色の瓶を見るととても恥ずかしくて。僕はメープルシロップをかけられないでいた。そしたら、彼は目ざとく気づくから。
「はい。どうぞ」
にかっ。太陽の神様が笑うみたいに頬を持ち上げた。メープルシロップをかけたフランスパンを僕のお皿に載せてくる。僕は顔をラズベリーのように真っ赤にさせて受け取り、1口かじる。ぱりぱりとした耳の部分と、弾力のある小麦の白色。そうして、甘い匂い。蜜に誘われる蝶のように、僕はそれをばくばくと食べてしまう。だって、おいしいんだもん。
相良さんはそんな僕を見て楽しそうに笑っていた。くすくすと、忍び笑いをもらして。
その日は僕は仕事が休みだった。正直、この腰にある違和感のまま仕事ができるのかと心配していたから、休みでほんとうによかった。
相良さんは、今日はたまたま都内の支社に出向くことになっているらしく慌ただしく出かける準備をしている。相良さんのスーツ姿見るの、久しぶりかも。在宅勤務のときは私服のことが多いから。なんか、一段とかっこよくて……。僕は目で追いかけてしまう。
「お留守番、よろしくね」
家を出る前に、玄関で。にぎにぎと手を握られる。相良さんの行動って、いちいちかわいいんだよなあ。僕は惚けてしまって、なんにも言えない。
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