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第185話 Subとして
あの日。相良さんに足で頭を床に押さえつけられて、顎を蹴られて。髪の毛を引っ張られたあの日から、1週間が過ぎた。
あの日の記憶が、あんまりない。ショックで、頭の中が真っ白になってしまったからだと思う。
思い出せたのは、相良さんがわらってて、うれしそうで、時折見せる呆れたような表情。僕が言うことを聞かないから。相良さんの理想通りに行動できないから、彼は愛想を尽かしてしまったんだ。
あの日は、その後なんにもなくって。相良さんの車で家まで送り届けてもらった。なにか、しゃべったかな。なんかもう、雲みたいに記憶が曖昧で、思い出すことすら億劫な作業だ。
そんな中でも、翌日からはちゃんと仕事に行った。職場の人に迷惑はかけたくないから。いつもみたいに、相談の電話を聞いて。しっかり、しっかり仕事をしてた。
帰ろうとしたら、金森さんに肘をつんつんとつつかれる。
「一緒に、夜ご飯食べません? 近くにおいしいお好み焼き屋さんがあるんですよ」
僕は内心そんな気分じゃなかったけど、以前から金森さんにはお世話になっているし、このまま1人で帰っても気が滅入ってしまうだけだろうからと彼女とご飯を食べに行くことにした。
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