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第187話
「いただきまーす!」
金森さんが小さな口を大きく開いてお好み焼きを口に入れる。ふうふうと冷ましてから、ぱくっと。口に入れた瞬間、目を狐みたいに細めてほっぺたを押さえた。おいしいと、目が言っている。僕もそれにつられて、お好み焼きを1口食べてみた。
「……おいし」
僕の掠れた声を金森さんはちゃんと拾ってくれたらしい。親指を上げてGoodポーズを見せてくれた。
「やっぱり、おいしいものは誰かと食べるともっとおいしくなりますね」
枝豆を口の中に放り込みながら金森さんがにこにこ笑う。僕も熱々のいももちを口に入れた。生地の中にチーズが入っていてとろけていく。
お腹が満たされたところで、金森さんが不意に僕の目をまじまじと見つめてきた。そんなに見られると……友達だとわかっていても、なんだか恥ずかしい。
「言ってください。なにか、あったんですよね」
「っ」
わかっていますよ、という彼女のやさしい顔が。それを見ただけで僕は心の奥が張り裂けそうになる。言ってしまいたい。相談したい。慰めて欲しい。許して欲しい。
心が揺れた。
僕は両手を膝の上に握りしめて、俯く。黒い鉄板を見ながら、ぽとぽとと言葉をもらした。
「……恋人が、いるんだ」
「はい」
金森さんは驚かない。もうだいぶ前から勘づいていたようだから。
「その人の……好きな人の行為はどのくらい受け止められればいいのかな」
金森さんは黙って話を聞いてくれている。ちら、と目を見ると心配そうに細められていた。
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