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第189話
「じゃあ、また明日よろしくお願いします」
お酒を飲んでいい気分になったのか、ほろ酔い気分で金森さんがひらひらと手を振る。僕は心配になってしまって、変な男が近づかないように駅のホームまで見送った。
彼女は電車に乗ってからも、僕のことを見つめてくれていて手を振ってくれていた。僕も恥ずかしかったけど手を振り返した。11月の駅のホームは冷えるな。そう思って、自分の乗る電車を待つ。
家に着いてから、シャワーを浴びてベッドに寝転がる。そろそろ、暖房つけなきゃ辛いな。なんてことを考えながら、スマホをいじって音楽を聴く。
相良さんと出会ってから、聴くのは恋愛の曲ばかりだ。片思いとか、両思いとかテーマはそれぞれだけど。洋楽だと、英語の意味がわからなければ和訳を紹介してくれるサイトを見ればいいし。相良さんなら、和訳なんて必要なくて。聴いただけで歌詞の意味がわかるんだろうな。……いいな。すごく、憧れる。
ほら、まただ。
気づけば僕は相良さんのことばかり考えている。
ふとしたときに、彼の表情が浮かぶのだ。今、相良さんがいたらどうするかなとか。
僕の日常には、もう相良さんの影があって当然なんだと思い知らされる。
ふと、こんなことを考えた。
相良さんはどうなのかな。僕のこと、考えてくれるときが増えたかな。そうだったらいいな。僕と同じ両思いなら。
でも、やっぱり。
胸につかえる。1週間前の出来事。
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