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第193話

 白磁の器にお粥をすくう。うん。鍋の中におかわりの分もあるし、まずはこのくらいにして持っていこう。僕はスプーンとお粥を入れた器を持って寝室に向かう。  ベッドで背中を丸めて横になる相良さんを見て、よほど辛いんだろうなと推測する。だから僕はそっと声をかけた。 「相良さん。夜ご飯作りました。よかったら食べてくださ」 「たべる」  僕が言い終わらないうちに、相良さんはのし、と起き上がった。ベッドに腰掛けて僕の手元を見つめる。相良さんのお腹がくう、とか細く鳴いた。 「じゃあ、僕洗濯物回してくるので……おかわりもあるので、そのときは声かけてくださ」 「……」  無言で口を軽く開く相良さん。体調が悪いときだというのに、彼は僕を困らすことをしてくる。少し微笑んでいるようにも見える。僕は観念して相良さんの隣に腰掛けた。持っていたスプーンでお粥をすくって、ふうふうと冷ます。その様子を相良さんはじっと見つめていた。 「はい。どうぞ」 「……ん」  口に含んでから、何度か噛んでいる。そうして、ごくりと飲み込んだ。僕は変な味しないかなと心配になる。 「味、大丈夫ですか?」  相良さんの目元をのぞきこむ。すると、相良さんは僕の頬を丸めた人差し指と中指の背中で撫でてくれた。 「おいしい。こんなおいしいお粥食べたの初めて」  そんなに褒められてもなにも出ないよ。僕は黙りこくって相良さんの口と器をスプーンで往復する。

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