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第197話
朝ごはんは昨日の残りのお粥を食べることにした。相良さんは、僕にもお粥を食べるように促してきた。僕はそんなにお腹が空いてなかったから少ししか食べられなかった。とってもおいしいかはわからないけど、食べられる味だというのはわかった。それに気づけてほっとした。相良さんは「うまいうまい」と言いながら口にしてくれる。そんなことを言われたら、照れてしまうじゃないか。相良さんが食事をしているとき、僕はローテーブルの下で手をもじもじと交差させていた。
食後、お腹の休憩をしていると相良さんはシャワーを浴びに行った。タオルを頭にかぶせて戻ってきた相良さんに聞く。
「僕もシャワー借りてもいいですか?」
相良さんは「もちろん」と笑顔を見せてくれた。昨日よりうんと体調が良くなったらしい。咳もしてないようだし。顔色も昨日よりいい気がする。
仕事に行く準備をしていると、背中に重みが。
相良さんだ。
僕の背中にぐてーっと乗っかっている。腕は僕の胸の前で交差していて。
「李子くん……行っちゃやだ」
お子様みたいな甘え言葉。僕はどぎまぎしてしまって、変に空気を吸ってしまった。
「けほ」
むせてしまって、こほこほやっていた。すると、相良さんは喉奥を震わせて笑いを耐えているらしい。静かに腕をほどいてくれた。
「家政婦さんしてくれてありがとね。すごく助かった」
笑いじわ。ほのぼのしている。やっぱり、1週間前のあれは何かの気の迷いだったに違いない。
だって、ほらこんなにやさしい。
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