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第199話 出逢い

「今日は連れていきたい場所があるんだ」  休日。夕方から相良さんの家に来た僕に、彼は微笑む。  行き先も言わず車に連れられ、走ること10分。車はホテルの駐車場に止まった。こんなホテル1泊50万は飛ぶみたいな。相良さんはこんなところに何をしに来たんだろう。  ホテルのロビーを通り過ぎ、エレベーターで最上階の広間に向かう。僕は相良さんの後ろをぴたりとついて歩く。こんなお高そうなホテル、僕には不相応だ。    大きな赤い扉の前で相良さんが僕を振り返る。 「じゃあ、行こうか」 「?」  僕はきょとんとしながら相良さんの背中を追いかけて広間に足を踏み入れた。 「っ」  視界に入ってきたのは、人、人、人。広間の所狭しと人がうようよいる。  僕は状況が飲み込めなくて、ひたすら前を歩く相良さんについて行く。人が多すぎて、相良さんを見失ってしまいそうだ。だから僕は手を伸ばして、相良さんの着ていたニットの袖を掴む。すると彼はくるりと振り返ってくれた。 「ごめん。歩くの早すぎたね」  僕の手に触れると、軽く繋ぎ合わせてくれる。恋人繋ぎ。僕は嬉しいけれど、こんなにいっぱい人がいるところでは見られるのが怖くてちらちらと人波の顔色をうかがってしまう。 「優希ィ」  相良さんの前方で声がした。ちょっとしゃがれてて、低めの声。よく響く。相良さんはその声の主を目に入れると、軽く手を挙げた。 「仁(じん)」  う、わ。  血統種のDom、という言葉が頭の中に浮かんだ。

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