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第200話
相良さんと同じくらいか、それよりも数センチ高い背。黒髪は短く切りそろえられ、額の上で斜めに分かれている。少し色黒なのか、健康そうな小麦色の肌。着ているジャケットから見える逞しい胸の膨らみ。足は長く、腰の位置も高い。
顔だ。あまりにも、眩しい。
相良さんの名前を呼んだときの表情。ちらりと見えた白い歯は白い輝きを放っている。八重歯が、見えた。
太めの眉と、その下にある切れ長の瞳。二重の線がくっきりしていて、彫りが深い。目鼻立ちがすっきりしている。
相良さんに仁と呼ばれた男性は僕の前に立つと、黙って僕を見下ろした。頭から足の先までじろじろと品定めするように見られて正直いい気分はしない。僕はその強い瞳が放つ眼光に耐えきれずに、相良さんの後ろに半身を隠す。
「仁。怯えてるから」
相良さんが牽制する。
「おっと。すまんなあ」
仁と呼ばれた男性は、しゃぼん玉が弾けて消えたみたいに身体を揺らして僕を見た。
「自己紹介もせんと。ほんまにごめんな。俺、諸伏(もろぶし)仁(じん)言います。よろしゅう」
そっと差し出された手をまじまじと見つめる。手、おっきいな。僕は相良さんをちらりと見上げた。その目は、握っていいよと言っているから。僕はおそるおそるその手を握った。途端に、むぎゅうと力を込められる。手、熱い……。
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